「アレンッアレンッ・・・・。」



誰だ?僕の名前を呼ぶのは。



「うっ・・・ひっく、うぅ・・・。」



何故だ?泣いているのは。



「行かないでよ・・・」



遠くでうずくまっているのを見て、今、手を差し伸べなければ一生できない気がした。誰なんだ、とても愛おしい。今すぐ抱き締めたい。そしてその涙をこの手で拭ってあげたいのに。



何故できない?



僕の体は鉛のように重く、全然彼女に近付けない。



足が竦んでいるのか?


否、理由がない。
僕の足が竦む理由なんでどこにもないじゃないか。




『怖いよな。』



誰だこの声は。僕が怖い?何故?



『仲間を裏切るのって怖いよな。』



裏切る?何故?
お前は誰なんだ。僕ははやくあの子に手を差し伸べたいのに、こんなところで立ち止まる時間はないのに。



『強がるなよ、怖いんだろ?お前とあの子が違うって理解することが。』



僕とあの子が違う?



『お前はこっち側の人間だ。』



違う。そうじゃない。
僕もあの子も同じだ。そうでなかったら、こんなに愛おしくない。



『このままでは、直にあの子も殺してしまう。』


殺さない。殺すわけがない。正体も分からない奴の声に騙されるな。



『お前はこちら側に来るべきなんだ。』



嫌だ。絶対に行くもんか。



『行こうぜ、俺達と。』


僕は。僕は・・・・・



『ワカッテルンダロ?自分ノナカニ他ノダレカガイルコト。」



僕の仲間って誰だ?





―――――――




「・・・・・レンッ!」



誰だ?



「アレンッ!」

「ん・・・・・」

「良かった、起きた。」

「・・・・・。」


夢を見ていたらしい。
目の前にいる君。
僕は誰だか分からない。

「ちょっと待ってて。今先生呼んでくるから。」


そう言って笑ったかと思ったら、うずくまって泣き出した君。



「うっ・・・ひっく・・・」

「・・・・・ひかり?」

「アレンッ・・・・・」



彼女の泣き顔を見た瞬間、さっきの映像が洪水のように流れ込んだ。





――行かないでよ





ああ、長い夢の中で僕の名前を呼んでたのは、間違いなく君だった。今なら手を差し伸べてあげられる。抱き締めてあげられる。 涙を拭ってあげられる。


「うっ・・・わ。アレン?」

「君だったんですね。ずっと名前を呼んでくれたのは。」

「・・・うなされてた。私ね、アレンが倒れた時、もう絶対会えない気がしたの。だからずっと名前呼んでた。」

「僕も怖かったんです。」

「何が?」

「もしかしたら、いつか君を傷つけてしまうかもしれないって。」

「うん。」

「でも、もう怖くありません。


君がいるから。
誰が何と言おうと、僕は君を、ひかりを愛してます。絶対傷付けない。僕は君の涙を拭う存在であり続ける。」



抱き締めた君の涙を拭う。
見つめ合う。手が触れる。
唇が、合わさる。





これが僕の決意。






君の味方

ある月曜日の朝に。



――――――

19巻の覚醒し始めたアレンさんを元にしました。
アレンが無事なことを切に願います。



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