>> 据え膳食わぬは

自分で言うのもアレだけど、僕はだいぶ我慢してると思う。ラビが驚くくらいなんだから余程、僕はひかりを大事にしている。
ひかりは落ち着くからと言って僕の家によく来るけど、それってどうなの?だって彼氏の家で二人きりですよ。絶対落ち着いちゃ駄目じゃないですか。今日だってひかりは上目遣いで(身長的に自然とそうなってしまうのだけど)「アレンち行きたいなあ」と言う。これは誘ってるとしか思えない。でも違うという自信がある。

何故なら彼女はキス以上ができないのだから


―据え膳食わぬは



「ひかりおまたせ・・・って」
寝てるし。


ふかーいため息が漏れた。トイレから帰ってきてドアを開けたらこの通り。ひかりが僕のベッドの上で寝ていた。落ち着くとか言って、ベッドの上で寝るとか落ち着きすぎだろう。・・・いちゃいちゃしようと思ったのに、バカひかり。

そう悪態をつきつつ、彼女を起こさないように扉を閉めた。そうしてベッドの横まで歩み寄り、ひかりの顔のすぐ前で頬杖をついた。

静かに寝息をたてて寝ている。今日は学校が忙しかったんだろうか。僕は彼女の頬にかかる横髪をそっと耳にかけた。そういえば僕とひかりは学校が違うから、学校でのひかりを全然知らないんだよな。ラビからたまに話は聞いてるけど、それは僕といる時と大差のないことだ(授業中に寝言言ったとか)。

ただ、ふと思う時がある。

ひかりはなんだかんだ言って結構可愛いのだ。中身はガキだけど。外見は結構可愛いのだ。中身はガキだけど。そんなひかりを僕の知らない所で慕う野郎がいないかと。

そんなことを考えるものだから僕はだんだんイライラしてきて、目の前にいるひかりに小さな加虐心が芽生える。

僕はひかりの頬をつねって伸ばしてみる。少し開いた口からは前歯が見え隠れする。ひかりは眉間にしわを寄せるが起きない。

「へんなかおー」

そう言って手を離したものの、手持ち無沙汰な右手が寂しくて、もっと彼女に触っていたくて、つねった左頬に小さなキスを落とした。


前に誰かが言ってた。
キスは愛情の現れだとか、ホルモンがなんだとか、

所有物への独占欲だとか。


「独占欲ねえ、」

その呟きは大して何もない部屋にポツリと浮かんで消えた。


「・・・んー」

すると僕の呟きが聞こえたのかひかりの声が漏れる。びっくりしてひかりを見ると、寝言だったようで未だに目は閉じられている。でも心なしかか、少し笑ってるように見える。


「・・・アレン」
「はい!?」

突然の呼びかけに肩がびくついた。でもひかりはそれ以上何も言わなくて、寝言だったことが分かった。


そんな笑った顔で見ている夢の中に僕がいるんだろうか。僕はもしかしてすごく馬鹿な心配をしているんじゃないだろうか。寝ているひかりを見ているうちに、そんな自分が馬鹿らしく、あわよくば好き勝手やってやろうと思った自分を恥ずかしく思えてきた。


「ばーか」

もう一度左頬をつねって僕は呟いた。



据え膳食わぬは




20111120


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