>> 疑惑のメール

カチカチと音がした。
目を閉じたままその音を聞いている。ああ、ここはアレンの部屋で、私はアレンの肩にもたれかかって寝ちゃったんだな。もうそろそろ帰らなきゃいけない、
そう考えて薄目を開けた。


「ん・・・」
「あ、起きた」
「ごめ、寝ちゃった」
「肩が痺れました」
「えっごめん・・・」
「うそうそ、大丈夫」

アレンはそう言って柔くついた私の寝癖を撫でた。


・・・あ、れ?


「どしたの?ひかり」
「ううん、なんでもない」

私は何か見てはいけないものを見たような気がしてならなかった。


―疑惑のメール



あの時、私はアレンがいじる携帯の操作音で目が覚めた。起きた私に気付いたアレンは携帯を開いたまま、私の寝癖に触れた。
そして、私は見てしまった。『明日は、好きな料理たくさん作って待ってるわね』と、ご丁寧にハートまでついていた知らない女の人からの受信メールを。

これって、浮気?付き合って早々に浮気?むしろ私が浮気相手か?
考えてみれば、私彼女っぽいこと何もしてなくないか?キスで精一杯だし、料理なんて一度も振る舞ったことないし・・・。あれ?私達普段何してんだ?


「・・・ひかり?」

はっとして顔を上げたらアレンが不思議そうに私を見ていた。あたりは真っ暗。ああそうか、もう遅いからって送ってもらってるんだ、私。

「なんかあった?」
アレンは立ち止まり、私の目線と同じ高さまでかがんだ。

「アレン・・・」
「ん?」
その優しい声や笑顔で私の不安や焦燥は一気に溢れ出す。

「浮気なんてしないでっ」
「えぇ?」

私は思いっきりアレンに抱き付いて力一杯抱き締めた。アレンは状況が掴めないようで、ただ狼狽している。

「知らない女の人の家に行かないでっ・・・」
「ひかり?」
「私も料理上手く作れるように頑張るから、もっと彼女らしくするから」
「ひかり、落ち着「キス以上もできるように頑張るからー!!」
「ちょ、道端で何言ってんですか」
「私アレンのこと、誰よりも好きだもん。誰にも渡さないんだから・・・うぅ」

だからアレンさん、私を見捨てないでよ。ずっと一緒にいてよ。私の隣はアレンしかいないんだよ。


「何の話?」
「え?」
「いや、だから何の話?」


あれ?


「アレンの受信メールに、お、女の人のメールが・・・」
「リナリーのこと?」
「ちがっ・・・だって確かに

ジェリーさん、って」



「ぶっ あっはははは」
「なんで笑うの!?」
「あはははっ!ひ、し、死ぬ・・・笑い死ぬ!」

なんで笑うの!?
私すごくマジメなのに!

「アレンのバカ!」
「はは、ごめんごめん」
「謝罪軽っ」
「そっかそっか、ジェリーさんかあ。
今度会わせてあげる」
「はあ?」
「びっくりするよ」

アレンは笑いを引きずりつつ、私の手を取って歩き始めた。

「ちょ、本当なんなの!」

誰だよジェリーさん!



疑惑のメール

しばらくして、ジェリーさんがアレンの高校にいる食堂の料理長(♂)であるということを知った。

またこんなオチ?
私ってバカなの?



「僕のこと誰よりも好きなんですか?」
「えぇ?」
「料理作ってくれるんですか?」
「いや、あの・・・」
「キス以上、してくれるんですか?」
「う、あ・・・・」
「僕からいきますよ?」

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