>> 09.喪失の予感 ラビの爆弾発言から十数分、私は奇跡的に生きている。レジの方から感じる殺伐とした空気とは裏腹に。 私は1枚ずつ慎重かつ丁寧にゆーっくりとCDをもとの場所に戻す。だって!だって仕事が終わったらアレンの所に行かなきゃいけないから!このまま終わりまで持っていってやる(怠慢)・・・! 「仕事が遅い。」 「出たあぁぁぁ!!!」 「なあにが出たですか、人をまるで鬼のように。あ、あなたには僕って鬼みたいなんでしたっけ。」 「・・・・・すいません。」 「謝るってことは肯定してるんですね。」 「まあ、ね。」 「ラビと知り合いだったんですね。」 「ふん、なはいいほ(仲良いよ)。」 「ちゃんと言語を話しなさい。」 「むい(無理)。」 だってアレンが両頬引っ張ってるんだもん。とも言えない。アレンはため息をついてカゴのCDを戻し始める。 「・・・ありがとう。」 「これが終わったら二人で休憩入るように言われてるんで。」 早く終わらせましょう、と淡々とCDを戻す。 私は知ってる、彼が今日も私の届かないCDばっかり戻してくれてることを。私には言わないけど。いつも私を助けてくれる。私の知らない所でもきっと。 ――アレンは鬼じゃないよ。 私は最後のCDを戻す。アレンも終わったらしい。私が終わったことを伝えようとアレンを見たら、彼はどこか違う方を向いていた。 「あ、アレン・・・」 「先に休憩入って下さい。」 アレンは空のカゴを持って奥に歩いて行ってしまった。 心臓が、握り潰されそうな感触がした。 目を見てくれなかった。 頬がヒリヒリする 何かを失う予感、 ―――――――― 神田の存在(笑) prev//next back |