>> 04.嫌じゃないな

「ひかり〜今日帰りどっか寄ってかね?」

「あ、ごめんラビ。今日バイトなの。」


私はカバンに教科書一式を詰め込んだ。

「はれ?今日も?」

「うん、怒涛の4連勤だよ〜」


じゃあね、と言って私は急ぎ足で教室を出た。早く行かないと!



「なんか最近ひかり、バイト楽しそうさね〜。な?ユウ。」

「あ?そうか?変わんねえだろ。」

「ユウは鈍感さね。」

「ハッくだらねえ。」


窓の外を見ると小走りで帰っていくひかりが見えた。



私は早足でバイトに向かう。バイト先は学校と道路を挟んですぐ隣にある。実は別に急がなくてもまだ余裕があるのだけど、私は赤信号にもどかしさを覚えた。



あの子に会える。



別に彼の態度は以前と全然変わってないけれど、本当にたまーに優しくしてくれるし、仕事も楽しい。少しずつバイトは私の楽しみになってきた。うん、住めば都。


私はいつも通りレジの係の人に挨拶をして、段ボールが積み重なった廊下を抜けて、いちばん奥にある更衣室に向かう。私はドアに手をかけた。



「あら、ひかりちゃん。」


後ろから女の人の声がした。


「ミランダさん!」


うふふ、こんにちは。と笑うこの人は同じくバイトのミランダさんだ。私より少し前に入ったらしい。彼女は私よりも年上だけど、私と同じ様な失敗をするので、とても親近感を持っている。


「今からですか?」

「ええ、今日は失敗しないように頑張らなきゃね。」


せっかく見つけた仕事だもの、ふふふ。と笑うミランダさんは今日もなかなか顔色が悪い。大丈夫だろうか。


「ふふ、あ、そうそうひかりちゃん。」

「はい?」


ミランダさんは私に内緒話をするように顔を近付けた。


「休憩室には静かに入ってね。」

「え?どうして。」


私はミランダさんに尋ねたが彼女はもう一度微笑んでレジの方に行ってしまった。


「静かにって・・・。」


私はしばらく考えた。が、答えは出てくる気配がしなかったので、とりあえず更衣室で着替えることにした。



更衣室に入って私は着替えた。ふと、あることに気付いた。今日は彼を見ていない。いないのかな、と思うと少し物足りない気がした。なんでだろう?


「今日は会えないのかな。」


ぽつりと呟いた言葉が更衣室に響いた。と同時にさっきのミランダさんが言っていたことを思い出した。


用はないけど休憩室に行ってみようかな。私はただ好奇心に従って更衣室を出て、休憩室のドアを開けた。




あ、




「・・・・・いた。」


心臓が跳ねた。


彼がいた。




ミランダさんに感謝、
一瞬、顔が緩んだ。

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