「大道、大道めぐり」 一生けん命、こう叫びながら、ちょうど十人の子供らが、両手をつないでまるくなり、ぐるぐるぐるぐる座敷のなかをまわっていました。どの子もみんな、そのうちのお振舞によばれて来たのです。 ぐるぐるぐるぐる、まわってあそんでおりました。 そしたらいつか、十一人になりました。 ひとりも知らない顔がなく、ひとりもおんなじ顔がなく、それでもやっぱり、どう数えても十一人だけおりました。そのふえた一人がざしきぼっこなのだぞと、大人が出て来て言いいました。 けれどもたれがふえたのか、とにかくみんな、自分だけは、どうしてもざしきぼっこでないと、一生けん命眼を張はって、きちんとすわっておりました。 こんなのがざしきぼっこです。 宮沢賢治『ざしき童子のはなし』 ※本文は「青空文庫」宮沢賢治『ざしき童子のはなし』より back |