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地獄のおまけ

(2014/10/31)

ハロウィン短編「地獄片/極楽問答/彼岸髑髏」のおまけ。
おまけといっても本編にはまるで関係のない世界の話。
セルフパロディで色々崩壊。
読了感をぶちこわしにしかねないので、そういう意味での閲覧注意。






「おまえさま、おまえさま!」

「駅前でケーキバイキングがあるそうでございますよ」

「なんでもハロウィン限定だそうで」

「いやはやどんなものか一度はお目にかかりたいものですなあ」

「おまえ、行きたいのかい」
「わたくしは大食漢ではありません。バイキングなどと元を取るには力不足。なにせこのとおり、腸も胃もございません」
「ならば用はないな」
「ただ口と舌はありますからなあ」
「…………」
「おまえさまの足の向くほうがわたくしの行き先でございます」
「…………見るだけ行ってみよう」
「はい、まいりましょう!いざいざ!まいりましょう!」
「…………」


【店内】

「おまえさま。次はあの南京のタルトと桃の香りのお茶にいたしましょう。添え付けにクリームとキャラメルをたんとのせてくださいな」
「はいはい。……ところで」
「なんでございましょう」
「おまえが大人しく席で待っていれば、おれがわざわざおまえを席に戻してからケーキを取りに行く必要はないのではないか」
「それはおまえさま、物色はバイキングの醍醐味でございますからに。わたくしもきちんと連れていってやくださいませんと」
「そういうものかい」
「そういうものでございます」


【1時間後の店内】

「いやはや菓子というものもずいぶん変わりましたなあ。妹にもひとつ食わせてやりたいくらいです」
「おまえ、ひとつ思ったのだが」
「なんでございましょう」
「おまえはさっきからそうやって感動してみるが、食うのは一口しか食わないじゃないか。菓子の良いところだけ口に入れて、九部九割はおれにやってしまう」
「そりゃあ胃も腸もございませんからな。舌でほんの味わうだけで満足せねば」
「おかげでおれは胸焼けがひどい」
「そりゃあ胸のある方は大変で」
「まるで地獄だ」
「いやはや、極楽でございますよ」






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