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スナッフ・ムービー


(素敵だったな。素敵、すてき)

 殺人鬼はメロンパンを口に運ぶ手をはたと手を止めた。頭の中にあるのは死後手を加えた死体の姿ばかりだ。仰々しく飾られた彼らのどれも、ひとつも、生きていた彼らのことを思い出せなくなっていることに気がついた。

(顔は思い出せる。名前、ああ、なまえ。だれだったかな。あの子はだれだったかしら)

 私は覚えています。ちゃんと覚えているのです。彼/彼女らの顔も最後の断末魔も死に顔も。この頭の中にはちゃんと入っているのです。だけど、なぜでしょう。名前がちっとも思い出せないのです。私の頭の中で風化しているのです。これでは彼/彼女らがあんまりかわいそう。

(駄目だ――また、殺さなくてはならない)




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