文章3 | ナノ
you are mine


「お前、女じゃねえだろ」

いつものあの眠たそうな目を一層眠たそうにして言ってきた男は相変わらずめんどくさそうな顔をしていた。



「部屋は生活するのに最低限のものしか置いてねえのに汚ねえ」

「飯は自作料理で他人が食えるもんじゃねえ」

「洗濯物をこまめにしねえ」

「洗い物はたまってやがる」

ぐだぐだ言いながらも物が散乱していた私の部屋を片付け、たまっていた洗濯物を干し、たまっていた洗い物を洗うマルコをベットの上で携帯片手に眺めている。

お前は私のおかんか!
なんてツッコミはとっくの昔にそこらへんに捨ててきた。

私は高校生になったと同時に一人暮らしを始めた。
理由はいろいろあるけど、1番の理由は私の日頃の生活態度だ。
私の親もこのままではやばい、と思ったんだろう。
しかし、当の私がその気でないのだから意味がない。

だからこの様だ。

「お前もいい加減自立しろよい」

携帯をカコカコしているとマルコはため息を吐いた。

自立かー…
そんなの考えたこともなかった。
何かあればマルコがなんとかしてくれたし、現に今だってマルコがなんとかしてくれてる。

と言うことはマルコから自立しなくちゃいけないってこと?

「あー…無理だよねー…」

「無理じゃねえよい。やるんだよい」

「マルコがいないとしんじゃうよ」

「………はあ」

ぼすん、と枕に顔をうずめる。

私知ってるんだよ!
マルコが大学で彼女作らない理由!
前いた彼女に私のこと聞かれたんだよね?
あの時彼女に「どうして彼女でもない女の世話してるわけ!?」って言われたんだっけ?
それでマルコは「じゃあ、お前とは別れるよい」って言ったんでしょ!
ちなみにサッチ情報だから。

あれ?これがなんで彼女を作らない理由になるんだろう?
サッチはそれについては教えてくれなかったけど、マルコの中の私の存在が大きいってことだけ教えてくれた。

私がもし、自立したらマルコはどうなっちゃうんだろう…
マルコの中の私の存在が小さくなっちゃうのかな?

「ほら片付いたよい」

「………」

自分で入れたのであろうコーヒーを持ち、ベットに腰掛けるマルコをじっと見つめる。

私が女じゃないならなんなんだろう?
女じゃないから女と見てない?
女ってなんだろう?
料理がうまくて、なんでもできて、部屋がきちんとしてる?
あれ?これってマルコじゃない?
家事なんてお手のもの!イケメン(老け顔だけど)!寛大な心の持ち主!ナイスプロポーション!

これはまさに、

「マルコが私の女になればいいんだ」



(コーヒーを思いっきり噴いたマルコに呆れられたのは言うまでもない)


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