文章3 | ナノ
持ち上げて落とす


「おなかいたい…」

「食い過ぎか?おいおい気をつけろよ最近食中毒流行ってるらしいしな」

「…………」

ぶん殴ってやろうかこいつは本当に。
みんながみんなお前と同じだと思うなよ!このブラコンがァ!

目の前で呆れ顔をする男を前屈みにお腹をさすりながら睨みつける。
食べ過ぎだとか食中毒だとかは今の私には関係ないのだ。

「食中毒になってしまえ」

ぼそりと呟いたが、聞こえなかったのか気分良く鼻歌を歌って海を眺めている。
これがマルコとかイゾウとかだったら、笑顔で殴られてるだろうなあ…(あの2人は地獄耳だからね)。

「あ、そうだ」

「………」

「今度上陸したときに…」

お腹がずきずきする。

エースはにこにこ(私のお腹の痛みなんて知りもしないで…)笑ってる。

今回すごく痛いなあ……腰もなんだかだるいし。
あとでお姉さまに薬をもらいに行こうかな…あーでもあんまり薬に頼りたくないしなあ…うー…

「聞いてんのか?」

「………なに」

俯いていると、聞いているかどうか疑問になったのかエースが下から覗き込んできた。

はあ…なんでこいつは私が忙しい時にわざわざ話しかけてくるのかな…

「次、上陸したときの買い出し係でしょ?聞いてたよ」

「んじゃいいけどよ…顔色わりーぞ?」

「お腹痛いっつったじゃん」

あんたこそ聞いてなかったの?と言おうとしたが腹部の痛みで言うのを止めた。
こいつと付き合ってたら治まるものも治まらない。

てか女の子が「お腹痛い」っつったらアレしかないだろ普通に考えて……ってこいつは私のこと女の子だと思ってなかったなそういや。

「なんだよ溜め息吐いて」

「あんたとしゃべってると自然と出るのよ。仕方ないでしょ」

「失礼なやつだなお前」

どっちが失礼なんだか…

これでもかと言うくらい溜め息を吐いてやって、とりあえずうるさいこいつから離れようと私はすぐさま考えた。
そして、話も終わったのでくるりとエースと向かい合っていた体の向きを変え、自室でも行って横になろうかと考えたとき、後ろからエースが叫んできた。

「お前も一応女なんだからあんまり腹冷やすなよ!」

これは期待してもいいのだろうか?
私が女の子の日だと言うことに気づいての気遣いだということだろうか?

エースに背を向けている私にはエースが今どんな顔をしているか分からない。

「エース…」

ゆっくりとエースの方を振り向く。
さっきまでのいらいらしていた気持ちが薄れかけて、変わりにほこほこした気持ちが溢れてきた。

もしかしたらエースは心配してくれているのかも…

そう思った。
そう思ったのに、

「腹出して寝んなよ!一応女なんだから」

とりあえず1発殴っておこうと思います。


(なんで殴るんだよ!)
(うっさい!自分の胸に手あてて考えやがれ!)

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