文章3 | ナノ
こたつの有効性
「こたつって背中寒いんだよね」
「んなもん俺だって寒いよい」
「うん知ってる」
「ならちゃんと入れ」
「むり」
あ、今マルコの額に青筋ができた。
いやいやそれより、ぬくい、ぬくくてこのまま寝ちゃいたいくらい。
やっぱさこたつは肩まで入るのが1番あったかいんだよ。
そのせいでマルコが足伸ばせなくてイラついてるんだけどね!
(いいじゃんマルコは座椅子があるんだから!(いや、そのせいでさらにこたつに入れてないんだけど))
「おい、3秒以内に出ねえと電源抜くぞ」
「そんなことしたらマルコも寒いんじゃないんですかー?」
「…………」
「うぐっ」
「狭いよい…」
胃が、胃が圧迫され…!
私がこたつから出ないのがそんなに腹立たしいのか!
マルコは寒さに耐えきれなくなったのか、こたつに無理やり足を突っ込み、あろうことか私の腹部…ちょうど胃の辺りに足を乗せてきた。
「彼女にこんなことしていいと思ってるの!?」
「ちゃんと座らねえお前が悪いんじゃねえか」
「いだだだだっ!ちょ、ぐりぐりしないでよ!」
ぎゃああああ!!
こんな可愛い彼女のお腹をぐりぐりするなんて……しかも足で、考えられない!
(いやマルコなら考えられないこともないけどさ…)
「寒いんだから仕方ないじゃんか!」
「俺だって寒いよい」
「マルコのが大人でしょ!我慢しろよ!」
「子どもは風の子って言うだろ」
ああ言えばこう言う。
この言葉はまさにマルコのためにあるんじゃないかと思う。
全く…こんな大人にはなりたくないよ。
はあ、と心の中で溜め息を吐いたはずなのにマルコはそれを感じ取ったのか、さらにぐりぐりぐりぐり私の胃を圧迫(胃がへこむ!)してきた。
どんな鬼畜だ!このドS!
「痛いってば!」
「やっと退いたか」
「はっ!し、しまった!」
あまりの痛さに我慢できず、私は遂にこたつから上半身を出してしまった。
ま、マルコの策略にまんまとはまってしまうだなんて……情けない。
「いったい!!」
はあ…、と先ほどよりも大きな溜め息を再び心の中で吐いたはずなのに、今度は思い切り弁慶を蹴られてしまった。
あ、あ、ああああ!
これ青痣確定だよ、絶対。
蹴られた弁慶を抱え込み、ぎりっ、とマルコを涙目になりながら睨みつけるが、マルコはそんなもの知らん顔で「失礼なこと考えるやつが悪いんだよい」って!
おま、どっちが失礼だ!
なんてことマルコに言えるわけない私は寒さに耐えながら卓上にあるミカンに手を伸ばした。
「寒いならこっち来たらいいじゃねえか」
「そっち?いやいや、狭いじゃん」
マルコは座椅子にもたれかかり、肩まで布団をかぶってさもぬくそうに言う。
言っておくが、マルコの隣なんてスペースは座椅子を入れればない。
そんなもの一目見れば分かることを…
マルコってば意外とあ…
「ほああああ!?せっかくむいたのに!」
「はなこは俺をバカにしてんのかよい」
いやいやいや!滅相もございません!
マルコなんてバカにしてたら今ここにいないよ私!
じとり、とマルコに見られてしまえば、ドキドキ冷や汗たらり。
多分これは、大好きなマルコに見られて嬉しい気持ちとドSなマルコに見られてビクビクしてる気持ちとが混ざっていれのだろう。
まるで蛇に睨まれた蛙状態。
「…………はあ」
「な、なんですか」
「……………」
「?」
スッと立ち上がり座椅子を持って私の方に歩いてきたマルコ。
はっ!も、もしやあの座椅子で殴られるんじゃ…!
前々から鬼畜やらドSやらだとは思ってたけどそんなドメスティックバイオレンスに走ってしまうなんて!
(なにを冷静に感想を述べているんだ私は)
「………」
「………?」
私の隣にまで歩いてきたマルコは特に私を殴るわけでもなく、座椅子を私の後ろに置いた。
(ちょっと殴られるのかと思った)
マルコの予測不可能な行動に身構えていた私の背後に立ったマルコは「よっ」と言って私の体を少し浮かし引っ張った。
(今度こそ殴られるの!?)
「う、…………あ?」
体を強ばらせ、襲ってくるであろう痛みに待ち構えてた私。
しかし、いくら待っても痛みは襲ってこない。
その代わりに襲ってきたのは今まであった冷気とは打って変わる温かみ。
目の前の景色は変わっていない。
それじゃあ後ろは?
「え、えと、マルコさんこれは一体?」
「これであったかいだろ?」
耳元で聞こえるマルコの声。
私の間違いでなければ、今、私は、マルコの足の間に座っていることになる。
しかもお腹にはマルコの腕が回っている。
「あったかくねえか?」
ひいいいいい!!
確信犯だろ!絶対!
後ろを見なくとも耳元で聞こえる噛み殺した笑い声で分かる。
こ、こいつ!
(あったかいを越してもう暑い!)
アンケートより
よいよい言わないマルコだ…