文章3 | ナノ
ムードよこい!2
※ムードよこい!の続き的な
「い、いきなり鳥にならないでよ!」
「お前がじっとしてればならねえよい」
深く溜め息を吐くマルコの御脚に掴まり、宙を飛んでいるというのはとても恐ろしい。
ああ神さま、どうかマルコの気まぐれで私が落とされませんように…
いくら能力者だと言ってもこの高さから落ちてしまえば無傷ではすまないだろう…下には木が生い茂っているから、うまくいって骨を折るか…
ああ、考えるだけでぞっとする。
「ったく…俺1人で行った方が早いってのによい…」
「あんな得体のしれない森の中で1人でいるのだけは嫌だもん」
「誰のせいで迷ったと思ってんだよい」
「ごめんなさいすみませんだから落とさないで」
ちょっと可愛く言ってみただけなのにそんな睨まなくったっていいじゃない!
いつもに増してマルコが恐ろしく見えてしまうのはきっと逆光のせいだ、そうに違いない。
「…………」
「…………」
「……う、」
「あ?」
あれ?おかしい、おかしすぎる。
まだマルコの御脚に掴まって数分しか経っていないのにもう腕が悲鳴をあげている。
マルコの顔色を伺うべく、顔を少し上げてみると予想通り冷たい眼差しで見られた。(予想してただけにその予想が当たってつらい)
「ね、ねえ!休憩しない?」
「休憩なんかしてら日が暮れるだろい」
「え、そんな遠くまで来ちゃってた!?」
「親父がいつ出航するかも分かんねえのにゆっくりしてられねえよい」
おお…流石マルコだ…
あ、いやいや!私だってちゃんと考えてたよ!声に出さないだけで!
わ…分かってたんだけど…頭と体の反応は全く相反するものであった…。
頭では「早く船に戻ろう」、体は「やばいやばい腕やばい落ちる落ちてしぬ休憩しようよ!」という感じだ。
マルコは平然として腕を動かしている。
え、マルコ疲れないの?
私もう腕がぷるぷるして手汗がはんぱないことになってるんだけど……え?手汗?
「…………あ、」
「は?」
気づいたときにはすでに体が勢いよく重力に伴って落下していた。
急いでマルコの方を見ると、逆光で顔は全く見えなかった。
そして痛みを覚悟して目を瞑り、身構えると、耳に入ってきたのはザッパアアアアン!という音と、僅かな痛みと、体の力が抜けるような感覚だ。
(よかったな、下が海で)
(し、しぬかと思った…!)
(お前もうちょっと俺さまに感謝しろよ…)
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