文章3 | ナノ
ポイ捨て禁止
「あーちー…」
「あーつー…」
「…………」
「あー気持ちいいー…」
「「「………」」」
じとーっとした視線を船の縁から海に向ける私たち。
空調設備なんて搭載されているわけがない船に涼しい場所なんてあるわけがない。
いや、船の底に行けば太陽から遠ざかり、少しは涼しいかもしれない。
だが、船員たち全員が入れるほどのスペースは船の底にはない。
ましてや、見張り等の仕事をしなくてはならないので、ずっとそこにいれるわけもない。
私たちの視線の先には1人海に入って涼しさを満喫している男がいる。
男は私たちの視線に気づいたのか、わざとらしい顔をして話しかけてきた。
「ん?お前らは入らねえのか……ってお前らは入れねえんだったな!わりいわりい!」
げらげらと笑うその顔に1発拳をいれてやりたいところだが、奴は海の中。
私たち能力者がどう足掻いてもたどり着くことのできない場所にいる。
「ねえ、このまま出航しない?」
前々からこのムカつくリーゼント頭にはみんな痺れを切らしていたところだ。
そんなやつを残して出航したとしても誰も私たちを咎めたりしないだろう。
「ああ、そりゃあいい考えだよい」
「じゃあ俺ちょっと言ってくる」
パタパタ、と多分航海士かパパの所へと走っていくエース。
マルコがこちら側にいれば怖いものなんてない、むしろサッチなんて赤子の手を捻るようなもんだ。
下を向くときゃんきゃん吠えるサッチの姿。
うるさいってば!
「なんだよお前らは!よってたかって俺をいじめやがって…この薄情もんが!」
「キッチンになんかなかったのかよい?」
どうやらマルコはキッチンにある食料庫の中の冷たいもので体の熱を取ろうという魂胆に出た。
が、それは無理だ。
「食料庫のカギは、そこに浸かってるリーゼントが持ってるの」
「へっ!わりいなマルコ!勝手に食料庫を荒らす奴用に作ってもらったんだよ!」
海の中で「因みに海楼石使用だぜ」と騒ぐサッチにマルコは殺意を覚えたのか、先ほどよりも青筋が浮きだっている。
サッチ、ご愁傷様です。
「…この服はあいつのだな?」
近くに置いてあった服を持ち上げて聞いてくるマルコ。
ああ!そっか!
普通ならカギはポケットに入ってる!
私たちはガッツポーズをして、さあポケットを探そう!とした瞬間再び下から声が聞こえた。
「カギならここだぜ!」
「!」
「…もうあいつの顔を見るのは疲れたよい」
「むかつくむかつくむかつく!」
「おーい!マルコにはなこ!」
「あ、エース」
「オヤジはなんて?」
パタパタ、と駆け足で戻ってきたエース。
心なしか、少し表情が暗い。
聞きたくないけど、聞こうじゃないか。
「それが…まだこの辺りにいるって…」
「ざまあみろ!お前らの思い通りにはならねえんだ!」
多分今私たち3人は3人とも同じことを考えているだろう。
こいつぶっ飛ばす、上がってきたら覚えとけよクソリーゼント、と。
はあ…駄目だ…
こいつ見てるといらいらする、はげる。
ふとエースの方を見るとエースは何か持っていた。
なんだろうとジッと見ていると、その視線に気づいたのかエースは「ああ、これ」と言った。
「そのまま手ぶらで帰んのもわりいかなーって思ってさ…」
「こ、これってまさか…」
「サッチのだな…」
「よくやったよエース!やる時はやる子なんだね!」
「あったり前だろ!なんたって俺は2番隊隊長だからな!」
おんなじ隊長でも2番と4番にはこんなにも差があるのか…
憐れみを含んだ視線を海にいる男に向けるが、やつは海水浴に夢中で気づいていない。
ふっ、バカなやつめ。
今から起こることも分からずにのうのうとして……
「おい!サッチ!」
「ん〜?なんだマルコ」
マルコはエースが持ってきた例のブツを手に持ち、サッチに見せた。
サッチはゆっくりとこちらに視線を向け、それが何か認識すると焦り始めた。
「な、なんでお前が持ってんだよ!?」
どうやらやつは危険を察知したらしい。
急いで船に上がってこようとしている。
しかし上がってくるのを待ってあげるほど私たちは優しくない。
否、優しくできるわけがない。
「こんなのが大事なんてねー…」
「大事ならもっときちんと保管しとくべきだよい」
「ベットの下とかありきたりすぎんだろ」
(その後に聞こえた声はサッチの叫び声のみ)
夏に書いたやつがメモに入っていたので修正してうpしました