文章2 | ナノ
アレルヤ・ハプティズム
▼僕<君
「かわいいかわいい!」
「男に可愛いだなんて…どうかしてるよ」
「だって可愛いんだもん!」
はあ…と溜め息をついて腰の辺りに抱きついているはなこを見る。
抱きつかれるのは嫌いじゃない。だけど「可愛い」だなんて言われるのは嫌だ。
「アレルヤってばほんっと可愛い!」
再び、嬉しそうな顔をして言う君の方が僕の何倍も可愛いと思う。
「…僕よりも君の方が可愛いよ」
思ったことを素直に口に出すとはなこは僕の方を見てにやにや笑う。
にやにや…うん、にやにやしている。こういう時のはなこは僕のことをからかおうとしている時だ。
僕ははなこから発される次の言葉をそれなりの準備をしていた。はずなのだが、はなこから発せられた言葉はそれを見事に打ち砕くほどの効力を持っていた。
「女の子みたいな声出すくせに?」
「女の子みたいな…?」
最初、なんのことか全く理解できなかった。
女の子?確かに僕にはハレルヤと違い、女々しいところがあるかもしれない。だが、女の子のような、あんな声を出したことはあるだろうか?
必死に記憶を探ってみたが、思い当たる節がない。
こちらを見上げているはなこの顔は今もずっとにやにや。そして、爆弾が投下された。
「ほら、私よりもあんあん言っ」
「うわああああ!!!」
あああ!きっと今の僕は顔が真っ赤だ!なんてことを言い出すんだ!はなこは!
慌てふためく僕を見て、はなこは「顔真っ赤!可愛い!」などと叫ぶ。
「可愛いよね、アレルヤは!」
確かに…それについては身に覚えがある。
別に僕がM体質とかじゃない(はず)。はなこがあまり声を出さないだけだ(と思う)。
…あ、あれ?ちょっと待って。はなこが声をあまり声を出さないってことはキモチヨクナイってこと?え、じゃあいつも僕だけがキモチヨカッタだけ?あああああ!!ど、どうしよう!どうしたらいいのハレルヤ!
「すぐ顔が赤くなってね、『いれたい』って言うときのあの顔!すごく可愛いの!」
「そんなこと…」
ない。とは言い切れない僕はどうしたらいいんだろうか。確かに僕はいつも切羽詰まっている。それははなこが可愛くて仕方ないからなんだ。
ハレルヤに問いかけても返事はない。ハレルヤは僕の女々しいところが大嫌いだから無視しているんだろう…
い、いや!それじゃあ駄目だ!ねえハレルヤ! 起きてよ!君が何か僕に言ってくれなきゃ一生僕ははなこに「可愛い」って言われ続けるじゃないか!そんなの僕は嫌だ!ハレルヤ!!
(だあああ!うるせえ!!)