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今日はなんてぽかぽかとした気持ちのいい日なんだ。
こういう時はただ純粋に日光浴でもしたい気分になるものである。
俺は船の縁にもたれて、微笑みながら海の地平線を眺めた。

ああこれで美女が隣にいればこれ以上に幸せなことはないだろう。

そう思うが現実はそんなに甘くない。
俺の隣にいるのは美女でない上に、ましてや男。
その男の隣に女がいるものの、その女はきゃんきゃん犬みたいによく吠えるような女。

もう俺はため息しかつけない。

こいつらは日々マルコというオモチャの取り合いに忙しいガキでしかない。
いい加減どちらが大人にならなくちゃいけないと言うのに、いつまで経ってもこれっぽっちも成長しない。むしろ退化してるんじゃないかと思ってしまう。

まあ、第三者の立場の俺はその状況を楽しんでるってわけだがな。



「「これがマルコ(隊長)ならよかったのに…」」



横から聞こえてきた言葉。
ちらりと横目で見ると、そこにはエースとはなこがぐったりとして、船の縁にもたれていた。

こんなイケメンが隣にいるってのに、ほんと失礼な奴らだな。



「お前らってマルコ絡みじゃなきゃ仲良しだよな」

「リーゼント燃やすぞ」



ぽん、とエースの肩に手を置くとバシッとはらい除けられてしまった。
(燃やすっつっても海楼石の手錠かけてんだから無理だろ)
つかこいつらほんとマルコ絡みだと仲悪いな……
単体で見ると可愛げがあっていいもんなのに…

はらい除けられた行き場のない手をそのまま宙に浮かせていると、エースの奥にいるはなこが手錠がついている右手をあげてぎゃんぎゃん言い出した。



「いい加減外して!これじゃあマルコ隊長のところに行けないじゃない!」

「行きゃいいだろ?まあ、マルコがはなこに会いたがってるかどうかは別だけど」

「マルコ隊長も私に会いたがってる!でもエースが邪魔で」

「お前が邪魔だ馬鹿。だいたいマルコがお前に会いたがるわけがねえ」

「エースに言われたくない!」



また始まった。



「だいたいね、むっさいエースよりも可愛いくて女らしい私の方に隊長は振り向くに決まってるでしょ!」

「お前が女らしいとかあり得ねえ…こんなぺちゃんこ…」

「ななな!隊長に触らせたことも無いのにいいい!」

「ぐはっ!」

「あ…海楼石付けてるの忘れてた…」

「はなこ…てめえ上司殴るとは覚悟できてんのか?」

「ふん!何度も言うけどね、あんたなんか上司じゃないからね!」



貶されて青筋浮き上がらせているエースと胸を鷲掴みにされて腸煮えくり返っているはなこはついに殴る、蹴るの乱闘になってしまった。

海楼石ってなんだったっけ?
互いに能力を使えないものの、激しく殴り合っている2人をどう見ても海楼石を付けている能力者には見えない。

周りのクルーたちは、2人を面白そうに見るだけ。
まあ止めない俺もその一部になるんだろうが。



「わっ!」

「とった!」



エースがはなこを押さえつけ、クルーたちが「おお!」と歓声を上げた、その瞬間、
ガチャリ、と船室のドアが開いた音がした。



「おい、サッチ。ちょっと話が…」

「「「あ」」」



なんてタイミング。

船室から出てきたのは何枚かの紙を持ったマルコ。
普通の何も知らない人間ならば、この状態をどう見ても、どう見ても、

エースがはなこを襲ってるように見えるだろう。

普通の人、なら、



「サッチ、例の島についてのことなんだが」

「例の島?
ああ…あのことか」



当の本人たちは冷や汗をだらだら流しているが、お前らよく考えてみろよ?
マルコだぞ、1番隊隊長の不死鳥のマルコだぞ?
いつもの自分たちの扱いを考えてみろよ。

マルコはエースとはなこをチラッと見ただけで、いつものような面倒臭そうな顔をしたまま。
2人をスルーして俺の所まで歩いてきた。



「またチンピラ共が暴れて…」

「ったく仕方ねえなあ…
誰かに頼むか?」

「あー…人選はお前に任すよい」



ため息を吐きながら、チラリ、と気づかれないように横目で2人を見ているマルコ。


なんだ?
なんだかんだ言って気になってんのか?

くくっと笑った俺にマルコは「真面目にやれよい」と言ってきた。



「りょーかい」



そう言って俺が数枚の紙を受け取ると、またマルコはチラッと2人を見てから船内に戻っていった。



「ど…どうしよう…!
こんなエースとだなんて誤解…最悪ううう!!」

「そりゃこっちのセリフだ馬鹿!
何が嬉しくてはなこなんかを抱かなきゃいけねえんだよ…」

「抱かれるならマルコ隊長がよかったよおお…」

「そこは同感だ」

「あんたに同意を求めてないわよ!」

「んだと!?」

「なによ!?」

「まあまあお前落ち着けって」

「「ああ?」」



おい、そろそろ俺も泣いちまうぞ。

ってまあ冗談は置いといて…
いつまでもケンカされてたら色々と困るんだよな、おもしれえけど。



「お前ら2人で任務だとさ」




(仲良く協力してちゃんと任務こなしたら言うことなんでも聞いてやるってマルコが言ってたぞ。なんでも、な)



あれ…このシリーズの相手ってマルコ…だよね…?






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