シリーズ | ナノ
「マールコ隊長!」
「あ?…うおっ!」
「きゃっ」
なんとも心地よいお昼時。
こんな時には昼寝でもしたくなる。
もちろん、好きな人と!
そんな私は運命の赤い糸で繋がっているマルコ隊長を探しに甲板に出た。
するとちょうど隊長は私に背中を見せてクルーと話していた。
こ…これはチャンス…!
私はよろけたふりをして隊長に抱きついた。
「今日も素敵です!
ああ!隊長の生肌!!
私の頬に当たってます!
隊長の生肌あああ…あ?
あれ?なまは……だじゃない…?」
抱きついた先にあった胸板に頬ずりする私の目の前にはどこかで見たことのあるきっちりとボタンが閉められた服。
なんだかいつもと感じが違う。
しかしどこかで見たことのある………なんて上を見てみると、そこにはやはり不死鳥エロスなマルコ隊長ではなくて、同じ隊長なのにマルコ隊長とは月とすっぽん並みにかけ離れているゴツいリーゼント男がいた。
(因みにエースはミドリムシだ)
「なななな!!」
「いくら俺がイケメンだからって頬ずりすんなよな。
はあ……モテる男はツラいぜ」
2番隊はなこ、一生の不覚であります。
何を思ってサッチと隊長を間違えてしまったのか。
なんで隊長のいた所にサッチがいたんだ……!
くそ、サッチなんて沈めばいいのに!
この前、こいつのせいで隊長に鼻血姿を見られてしまったんだから!
(結果オーライだったが、私は許さないぞ!)
「た、隊長…は…」
「さっさと放せよい!」
「駄目だ!
今放したらはなこにヤられちまう!」
「エース!!」
私の(ここ強調)隊長が…!
そうか分かったぞ。
私が抱きつこうとした瞬間、エースが隊長を引っ張ってサッチを隊長のいた位置に押したんだ!そうに違いない!
私はサッチを押しやり(詳しく言うと突き倒して、だ)、急いで隊長の元へ走る。
「放しなさいよ!」
「こっち来んな!貧乳!」
「どっちも放せよい!」
「あんたよりは確実にあるからね!
だいたいなんで私の隊長にがっつり触ってんの!?」
「おい」
「隊長に向かって偉そうな口聞いてんじゃねえよ!
マルコに触れていいのは俺の特権だ」
「お前ら」
「私の隊長はマルコ隊長だけだもん!
隊長に触れるのは私だけの特権だもん!」
「マルコ可哀想に…こんな奴に触れられて」
「いい加減に」
「エースに触られる方が可哀想だってば!」
「ストップストップ!」
だんだんエースとの言い合いがヒートアップしてきたころ、私が押しのけたサッチが私とエースとの間に入ってきた。
ああもう、お節介だなほんと。
前もそうだったし…
なにこいつ、もうやだ、どんだけ目立ちたいの?
「邪魔なんだけど、殴っていい?」
「どけよサッチ、燃やされたくなかったらな」
エースもマルコから放されて不機嫌になり、もうすでに右手から炎を出している。
「お前らもっと兄ちゃんを大事にしろ!」とか叫んでいるけど、あんたなんかおっさんだからね。
大して兄貴っぽい行動したことないくせに……
「よーし、お前らの言い分はよくわかった」
「私たち、何かしゃべった?」
「いや、しゃべってねえ」
「お前らがしゃべらなくても俺には分かんだよ!なんたって俺はお前らの兄貴だからな!」
「「うざい」」
「そんなお前らに俺からプレゼントだ!」
「プレゼント?食いもんしかいらねえぞ俺は」
「プレゼントかあー。私お菓子がいい!」
「お前らの頭には食いもんしかねえのかよ……まあ手出せ、手!」
手?なんだ一体、何をくれるんだろう?
サッチに言われるがままに私は右手、エースは左手を、素直に出す。
くれるんだったら私はお菓子がいいな!
サッチの作ったお菓子はとてつもなく美味しいからね!
がしゃん
うきうきしながら待っていると聞こえた何やら奇妙な音。
がしゃん?がしゃんってなんの音?
サッチを見ると奴は嬉しそうな顔をしている。
そっと差し出した手を見ると、そこにあったのはお菓子だなんてリッチなものじゃなくて、私たち能力者の最大の敵である海楼石の手錠。
当たり前だが手錠には2箇所手にはめる場所がある。
片方は私、もう片方は…
「え…な、なにこれ…!」
最悪なことにあのエースの左手に、もう片方の手錠がはめてある。
これは夢なのか?夢オチ?
左手で目を擦って再確認しとみるが、やはりそこに見えたのは、がっちりと私とエースの手にはまっている手錠。
「仲良くしねえと外さねえからな」
「……は?」
「な…!」
Q、人生初の手錠とやらを手に付けた感触は?
A、不愉快極まりない
「「ふざけんなあああ!!!」」
(トイレとかお風呂とかどうすんのよ!?)
(こんな奴と四六時中一緒にいるとか無理だ!)
(…あいつらが仲良くできんのかよい)
(暇つぶしにはなんだろ!)