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好きな人に自分の鼻血面なんか見せたくないわ!と女の子なら必ず言うだろう。

私だってもちろんその1人だ。

いくら好きな人に鼻血姿を見せたことがあると言っても、見せたいとは思わないものだ。
(以前隊長の生着替えを見てしまい、ちょっと鼻血を出しちゃった!てへ)
その状態で冷たくされたりしたら、いつもよりも心に激しく傷を負うものだ。
(「勝手に入ってくんじゃねえよい」って言われた挙げ句、手当てもしてくれないで部屋から追い出された…)


しかし今回は違う。
今回は隊長が手当てしてくれる!

ああ私の心臓は今にも破裂してしまいそうだ!
なんという奇跡!
いや、もうこれは運命とでも言うべきか。
やはり私は隊長と、隊長は私と何かしらの運命で繋がっているんだ!



「ほら、こっち向けよい」



この際自分の鼻から血が出てるなんて気にしない!
あのマルコ隊長が、私のマルコ隊長が、ティッシュで優しく拭いてくれている!!

私は瞳を閉じ、胸の前で指を組み、ゆっくりと隊長の方に顔を向ける。



「…何ニヤけてんだよい」

「ふぎっ!」

「暴れると止まらねえからな」



ぐぐぐっ、と鼻の奥まで突っ込まれたティッシュ。

今、サッチやエースがいなくて本当によかったと心から思った。
きっとあの2人がここにいれば、容赦なしにこの姿を馬鹿にしてくるにちがいない。

まあ今はそんな心配をする必要なんてない。
なんせ、あの邪魔なエースも、口うるさいサッチも、ここにはいない。
そうだ2人共ここにはいないんだ。



「あああありがとうございます!!
もう隊長大好きです!
世界で1番好きです!!」



がばっ!と抱きつく私。
たとえ殴られたって構わない。
隊長と2人っきりだなんて状況滅多に味わうことできないんだから!

2人っきり、2人っきり、そればかりが頭の中を高スピードで走っていく。
頬に隊長の胸を当て、じっくりと隊長の温かみを感じる。

直に隊長の生肌が当たってるううう!!
今まで生きててよかった!!!



「………」

「………」

「……?」



……おかしい。

いつもなら頭に重たい一撃を与えられてもおかしくないと言うのに、いつになってもそれは落ちてこず、

不思議に思った私は恐る恐る上を見てみるとそこにいたのは顔を真っ赤にさせた隊長が、

そう、真っ赤にさせた………真っ赤に………真っ………え?



「やだ隊長ったら!
そんな照れなくてもいいじゃないですかあ」

「っ!!」



私がいつもの調子でそう言うと、隊長はばっと口元に手を当て顔を逸らす。

……………え?



「えと……隊長?」

「……うるせえよい」

「かっ、」



可愛すぎる!
真っ赤な顔をした隊長がこんなにも可愛いだなんて…!



「ああもう隊長、嫁に来てください!
可愛すぎます!
あ、いや隊長はかっこいいんですけど、オールマイティーな隊長に私のハートはずっきゅん!来ました!
ってなことで邪魔なエースもいないことだし、私と誓いのキッスを……」

「調子に乗るんじゃねえよい」

「ぐえっ」



あああ!!
隊長が離れていく!!!

後もう一歩、と言うところで引き離されてしまった。
私を引き離した隊長は額に手を当て、深いため息をついている。



「変に悩んでいた俺が馬鹿みてえじゃねえかよい」

「へ?何か悩んでたんですか?」

「何ってお前、この前にトラファルガーに会ったとき…」



そこまで言うと再び隊長は「しまった」と言ったような顔をして、口元に手を当てる。

トラファルガー?
確かにトラファルガーと会ってから隊長と私の間に不穏な空気が流れてしまった。
(絶対トラファルガーが呪いをかけてるんだ!
そうに違いない!!)



「も、もしかして迷子になったのまだ怒ってたんですか!?」

「………はあ」

「なんでため息!?」

「…お前の馬鹿さに呆れてんだよい。
ほら、用が終わったんならさっさと出ろ」

「な、ちょ、まっ」



私の背中を手でぐいぐいと押して部屋から出そうとする。
いくら私に触れたいからってそんなに背中押さなくたって…いた!いたい!
隊長!爪が食い込んでる!!



「ま、待って隊長!
まだ用事終わってない!!」

「終わっただろい。
血だってもう止まっただろうし…」

「まだ隊長の部屋の空気を十分に吸ってません!!」







(お、はなこ!どうだった?…って何頭に氷乗っけてんだ?)


しぶとく粘ったら思い切り殴られました。
この後、エースにも同じ部分を殴られます。


(次の日から隊長はいつも通りに戻ったのであった)






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