「べっきょな?」 【 思わせぶりの天才ですか? 】 オールしてずっと寝てなくて。だけど誕生日だからっていうのもあるけどなんだか起きていたくて。まぁ、23時も回ったし明日普通に学校だし。寝なきゃと思いベッドに横たわる。思ってたより疲れてたみたい…もう少しで寝れそう。 一日のこと振り返りながらにやける。最高の誕生日だったなって。みんな会いにきてくれて、みんなお祝いの電話やらLINEやらくれて。おまけだけどクリCASでも祝ってもらったし。あぁ、俺幸せ者だな。…なんて余韻に浸る。…そんな幸せな時にさスマホめっちゃ鳴ってるんですけどマジだれだよ。チャニョリータだったらとりあえず首締める。 誰だか確認しないでちょっと不機嫌な声で電話に出る。俺、不機嫌な声で電話に出たこと最高に後悔してる。だってさ、だってさ電話かけてきたのはそう、聞き間違えるはずがないあいつの声だったから。 「べっきょな?」 『…お前か』 「ごめん、寝てた?切る?」 『いや、寝てなかった。』 「(完全に寝てたろ) ほんと?」 『…ん。』 「寝たかったら寝るって言ってね、たいした用じゃないから」 『なんか用なの?』 「ううん、そういうわけじゃない」 『(なんだこいつ) そう。』 本当は電話かけてもらってすっげー嬉しいくせにさ、冷たく接しちゃう乙男心。乙女心だと可愛く聞こえんのに乙男心だとまじでオツみたいになるのは何で。でもそんなことなにも気にしてないのか明るく喋るお前。意識してるのは俺だけかよ。 「あの、本当はピッタリに祝いたかったんだけど」 『ピッタリじゃなくても祝ってくれたからいいよ、嬉しかったし』 「いや、わたしはピッタリに祝いたいの。」 『おお、そっかそっか』 「でも、できなかったから」 『ん』 べっきょな、今の時間見て、とお前が言うから部屋の時計を見てみる。23時59分。ちょうど今の時間は23時59分。 「見た?」 『23時59分…だけど?』 「ふふ、べっきょなの誕生日あと1分だね」 『…ん。』 「残り1分私のことだけ考えて。」 『おま、なに言ってるか分かってんの?』 「はい、ひーとみーを閉じてー。そして私の話を聞いて。」 『…』 黙っておなまえの言うとうりに瞳を閉じてあいつのことを考えてみる。バカでアホで口悪くて女らしくなくて男ったらしで。魅力がなんなのかわからないけど、惹かれるものがあって。 「実際あと、15秒ぐらいしかないけど…べっきょな、誕生日おめでとう。」 『…』 「べっきょなと出会えたことに感謝します。いつもありがとう。笑わせてくれてありがとう。」 本当は魅力なんて、とっくに気づいてるよ、誰よりも友達思いで言いたいことをちゃんと言ってくれる。感謝も自分の気持ちも全部ストレートに言える子。俺にないそういう部分に惹かれるんだろ。はぁ、むかつく。チャニョルとジョンデにも同じ事してるってわかってんのに。二人だけじゃなく、誰にでも、平等に。そういうとこが好きだけどそういうとこが嫌い。クソ。 『…あと5秒?』 「うん。あ、最後にべっきょな愛してる。」 『…お前すぐ愛してるって言うよな』 「私のことだけちゃんと考えた?」 『無視かよ、ちょっとチャニョルとジョンデが邪魔した』 「それは許容範囲。」 『いや、なんでお前のことだけ考えなきゃいけないんだよ』 「結構恥ずかしいこと言ったし、どうせなら集中してもらおうと思って。」 『よく私のことだけ考えてとか言えたな。』 「あ、やっぱドキドキした?チャニョルとジョンデに使お」 『…ルハンとかにも使ったの?』 「使うわけwwwっていうかルハン先輩の誕生日知らなかったし」 『…そっか。』 「これから言うつもりはあるけど初めてはべっきょな。あーこれ、本当に反応おもしろwwwww」 『…クソ野郎』 明日早いから切るねと、言いたいことだけ言って勝手に切ったおなまえ。電話の余韻に浸る。わ、俺、すごいドキドキしてた。むしろ眠気冷めたんですけどクソ野郎。むかつく。あいつなんなの?私のことだけ考えてとか、普通友達に言うかよ、あいつだから言うんだろ。むかつく。むかつく。あいつに翻弄されてるのがむかつく。攻略できないのがむかつく。本当にあいつは期待を裏切らねぇ。俺だって愛してるよ、クソ野郎。あー、絶対他のやつにはやらない。 _ 思わせ振りの天才ですか? |