蠍蝗
 

□小指

 ひとのえにしが小指にあるのだとすれば、小指さえなければ楽になれるとひとが嫌いな王様は考えた。
 そうして王様は直ちに国民全員へ小指を切り落とすことを命じた。王様自身は勿論、お妃様や自分の子供、教会の神父様にパン屋に靴職人、王様に関わるひとも関わらないひとも、王様の国に住むひとならば生まれたばかりの赤ん坊から今にも死にそうな病人まで、一人残らず右と左、手と足の四つの小指を切り落とさせた。小指を切り落とすことに反対したひとたちは全員死刑にした。
 さて。数ヶ月が経っても特にひととひとが関わらなくなるということはなく、国民たちは何不自由なく小指を切り落とす前と同じような生活を送っていた。小指とひとのえにしとは直接の関係はなかったのだ。
 それでも王様は、確かに独りぼっちになれた。

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