骨 蜂蠍蝗
□幸せの肖像
かまきりとちょうちょをつがいで飼おうとした。
どうせうまくいきっこないさ、なんて高を括っていたんだけど、二人は案外うまくやってるみたいで。
同じ生き物相手なのに全然うまくいかない僕がちょっと恥ずかしくなったんだけど、やっぱり彼らにはそんなことはどうでも良いらしくて。
かまきりとちょうちょは二人で幸せそうにしている。
この程ちょうちょがめでたく妊娠して、そのうちに出産も終えた。母子共に健康そのもので、産まれたこどもは女の子二人男の子一人の三つ子だった。
ピンク色をした芋虫たちはみんな揃ってかまを背負っていて、事あるごとに僕を噛む。お父さんにもお母さんにもこれっぽっちも似ちゃいないのに、お父さんもお母さんもとてもこどもたちを愛してるみたいで。
かまきりとちょうちょとそのこどもたちは幸せそうにしている。
僕はそれがひどく憎たらしいと思ってしまって。真夜中、みんなが寝静まった頃を狙って家族の家に火をつけた。
燃える家からかまきりとちょうちょはこどもたちを抱えて慌てて逃げ出してきて、なす術もなく炎を眺めてるばっかりで、ざまあみろなんて僕は思う。
かまきりは片方のかまがもげてしまったらしい。ちょうちょは翅の一枚が焼けてしまったらしい。でもこどもたちには傷一つないみたいで。
かまきりとちょうちょとそのこどもたちはすこぶる幸せそうだったりする。
幸せ家族を庭に放してやって、僕はその夜、一人で首に縄をかけた。
ごめんね、なんて。
結局僕のもくろみは、何一つだってうまくいきやしないんだ。