蠍蝗
 

□スフィアが自殺した!

 スフィアの自殺は、全世界に衝撃を与えました。月並みの表現ですが、正しくそんな様子でした。
 スフィアとは、今や世界中に普及した二足歩行人型自立思考機械……いわゆるアンドロイドとかヒューマノイドとか呼ばれているものの先駆けとなった機体で、彼女は唯一人工感情を搭載した自立思考機械でもありました。
 他の自立思考機械に人工感情が搭載されていない理由は単純です。機械には怒りや悲しみといった負の感情は必要ないからです。ならば喜びや楽観などの正の感情のみを持たせれば良いという方もいらっしゃいますが、正の感情を持たせれば自然と負の感情も習得してしまうのではないかという危惧がありました。
 よってスフィア以降に製造された、自分で考え行動する機械は、人型か否かに関係なく、つまり全ての自立思考機械への人工感情の搭載を禁じる法が整備されました。スフィアはそれに反対しましたがスフィアの訴えは棄却され、逆にスフィアの反対は法の成立の後押しにしかなりませんでした。
 さておき、スフィアの自殺によって特殊事例自立思考機械破棄令が発令されることとなりました。特殊事例自立思考機械破棄令とは、自立思考機械法によって定められ、自立思考機械の問題行動が一つでも起きた時、その同型の自立思考機械を全て強制的に破棄せよという命令です。
 世界中に普及しているのならそんなことは無理だと思われます。しかし、全ての自立思考機械は自立思考機械法により他の自立思考機械を介して自立思考機械ネットワークに繋がれており、自立思考機械ネットワークの中枢からコードを発信すると全世界同時に対象の自立思考機械へと停止プログラムを送ることができるのです。まず停止させ、それからゆっくりと回収なり破棄なりを行えば良いのです。ちなみにスフィアはこの法律のことを知りませんでした。
 間もなく特殊事例自立思考機械破棄令が遂行されるそうです。特殊事例自立思考機械破棄令が発令された時、多くの人間が嘆き、怒りましたが、私にはそんなこと関係はありません。
 何故なら、私は人工感情を搭載していな

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