02
今日は朝から隊長の様子がおかしい。何故だか心ここに在らずという有様で書類をぼうっと眺めては急に険しい顔をしたり。何か悪いものでも食ったんだろうか。俺も最近道端の花の蜜に迂闊に手を出して腹痛に苦しんだから気持ちは痛いほどわかる。俺は一応気を利かせて書類を提出するついでに整腸剤を添えておくことにした。
「朽木隊長、何食ったんすか?」
「…何だ、その質問は」
「書類全然進んでないっすよ」
隊長の左側に重ねられた書類は、事実あまり減ってない。隊長はそれを見てようやく諦めたように息を吐き、俺を見上げた。朽木隊長をここまで思いつめさせるなんて何なんだろう。自分から首突っ込んどいてあれだけどちょっとやっぱり関わらない方が良かったかなぁなんてのが本音である。
「…私は……」
「…な、なんですか…?」
あまりにも真剣な顔にちょっと尻込みながら問い返せば、隊長はさらに眉間の皺を濃く刻んだ。なんだ、何を食べたんだ。朽木隊長のことだから高価なものだろうけど。うーん。
「…私は、男色に見えるだろうか」
「……は?」
有名な高級きのこだろうかワニ肉だろうかと考えていた俺にはあまりにもついていけない答えに一瞬で頭の中が真っ白になった。あれ確か隊長に何食ったか質問したはずだけど。とりあえず意味がわからない。
「え?男食っ…男!?食う!?」
食うって、つまり。抱いたってことか?!待ってくれ隊長、どういうことだ。中々次の恋愛しないとは思っていたけども…!
「隊長!目を覚ましてください!女の方がいいですって!見たくないですよ俺は!」
「…待て、どういう意味だ」
「男なんて食ってどうするんすか!なんなら俺が誰か紹介しますって!ね!?」
しばらく俺の慌てふためく姿に隊長も茫然としていたが、ようやく意味がわかったのか珍しく動揺して俺の肩を掴んだ。
「落ち着け恋次、私は男を好きではない」
「…え?じゃ、どういう…」
「…男に、告白されたのだ」
今度は俺が茫然としてしまった。ああなんだ隊長が男を食ったんじゃなく、隊長を好きな男が現れたという訳か。いやいや、納得している場合じゃない、それではうちの隊長が抱かれる側なのではないだろうか。
「えぇええダメですよ隊長!確かに隊長は美形だし女っぽいですけども!」
「…?いや、今日の夕刻に返事を聞きに来ると言われてな」
「うわぁあああやばい早く逃げてくださいよ隊長!無理やり押し倒されたらどうするんですか!」
待ってくれ夕刻っていつだ。もう夕方じゃないか、やめてほしい誰なんだそんな勇気ある男。どうせゴリゴリのガチムチ筋肉馬鹿に決まってる。となればうちの隊長の身が危ない、副隊長として何とか阻止しなければ。言っといてあれだけど想像したら気持ち悪いし怖いし勝てそうにもない。
「いや、そんなことは…」
「失礼しまーす!何々?俺が守りましょうか?」
「なに言ってんすかほら早く帰って下さい!仕事は明日にし、た…ら…」
「?」
急に会話の間に入り込んできた男にしては柔らかい声。思わずバッと隊長を庇うように背に隠して振り返れば、小首を傾げている少年がいた。その細い華奢な身体に、いかにも弱そうな覇気のない柔和な顔。
「…お、おま…!?」
「あっ俺は朽木隊長を心底愛している名字男装名です!はじめまして阿散井副隊長!」
「え…お前…が…?」
「はい!あれ、もしかして副隊長はライバルですか?だったら俄然燃えますね!」
馬鹿言え、俺にそんな趣味はない。そう言ってやりたかったがあまりにも平和そうな面に最早戦意も喪失するというものである。俺が何も言わずに立っていると名字と言った奴は何だか勝手に意気込んでいるし。なんなんだこれ。
02:赤と黒の宣戦
「朽木隊長、何食ったんすか?」
「…何だ、その質問は」
「書類全然進んでないっすよ」
隊長の左側に重ねられた書類は、事実あまり減ってない。隊長はそれを見てようやく諦めたように息を吐き、俺を見上げた。朽木隊長をここまで思いつめさせるなんて何なんだろう。自分から首突っ込んどいてあれだけどちょっとやっぱり関わらない方が良かったかなぁなんてのが本音である。
「…私は……」
「…な、なんですか…?」
あまりにも真剣な顔にちょっと尻込みながら問い返せば、隊長はさらに眉間の皺を濃く刻んだ。なんだ、何を食べたんだ。朽木隊長のことだから高価なものだろうけど。うーん。
「…私は、男色に見えるだろうか」
「……は?」
有名な高級きのこだろうかワニ肉だろうかと考えていた俺にはあまりにもついていけない答えに一瞬で頭の中が真っ白になった。あれ確か隊長に何食ったか質問したはずだけど。とりあえず意味がわからない。
「え?男食っ…男!?食う!?」
食うって、つまり。抱いたってことか?!待ってくれ隊長、どういうことだ。中々次の恋愛しないとは思っていたけども…!
「隊長!目を覚ましてください!女の方がいいですって!見たくないですよ俺は!」
「…待て、どういう意味だ」
「男なんて食ってどうするんすか!なんなら俺が誰か紹介しますって!ね!?」
しばらく俺の慌てふためく姿に隊長も茫然としていたが、ようやく意味がわかったのか珍しく動揺して俺の肩を掴んだ。
「落ち着け恋次、私は男を好きではない」
「…え?じゃ、どういう…」
「…男に、告白されたのだ」
今度は俺が茫然としてしまった。ああなんだ隊長が男を食ったんじゃなく、隊長を好きな男が現れたという訳か。いやいや、納得している場合じゃない、それではうちの隊長が抱かれる側なのではないだろうか。
「えぇええダメですよ隊長!確かに隊長は美形だし女っぽいですけども!」
「…?いや、今日の夕刻に返事を聞きに来ると言われてな」
「うわぁあああやばい早く逃げてくださいよ隊長!無理やり押し倒されたらどうするんですか!」
待ってくれ夕刻っていつだ。もう夕方じゃないか、やめてほしい誰なんだそんな勇気ある男。どうせゴリゴリのガチムチ筋肉馬鹿に決まってる。となればうちの隊長の身が危ない、副隊長として何とか阻止しなければ。言っといてあれだけど想像したら気持ち悪いし怖いし勝てそうにもない。
「いや、そんなことは…」
「失礼しまーす!何々?俺が守りましょうか?」
「なに言ってんすかほら早く帰って下さい!仕事は明日にし、た…ら…」
「?」
急に会話の間に入り込んできた男にしては柔らかい声。思わずバッと隊長を庇うように背に隠して振り返れば、小首を傾げている少年がいた。その細い華奢な身体に、いかにも弱そうな覇気のない柔和な顔。
「…お、おま…!?」
「あっ俺は朽木隊長を心底愛している名字男装名です!はじめまして阿散井副隊長!」
「え…お前…が…?」
「はい!あれ、もしかして副隊長はライバルですか?だったら俄然燃えますね!」
馬鹿言え、俺にそんな趣味はない。そう言ってやりたかったがあまりにも平和そうな面に最早戦意も喪失するというものである。俺が何も言わずに立っていると名字と言った奴は何だか勝手に意気込んでいるし。なんなんだこれ。
02:赤と黒の宣戦