大勢の人が群がる通りの片隅が、どこかの熱くライトが当てられる豪勢な舞台のように、時が止まってしまったように、世界の中心であるように、バニーは俺の心を奪い去る。

計算なのか、はたまた自ずからなのか。

どちらにせよ、奪われてしまう自分が過ちなのかも知れない。


『あ〜…もうダブルで恥ずかしいから、それぐらいにしてくれっ!飯行こ、飯!』

体と顔が熱くなるのをじわりじわりと強く理解しながら、話題を先に進めた。

『すみません!お腹空きましたよね。行きましょう。』


実際は大して腹など空いていない。

バニーのぬくもりをもらっただけで気持ちの腹ごしらえはまかなわれていた。

―俺って安上がりな男かな?―

こんな風にして、しあわせに惚けながら、バニーの隣に連れ立って歩いた。



『着きました。ここです。』

そこはこじんまりとしているが趣のある日本料理屋であった。

『へえ〜。こんなところに和食の店あったんだ。』

『はい。僕も知らなかったんですけど、折紙先輩に教えて頂いて。』

『流石折紙だなっ。和を心得てるなぁ。』

『ええ。僕、虎徹さんと日本料理と日本酒をご一緒したくて。折紙先輩にご相談して正解でした。自分で探してもなかなか見つからなくて…』

『ありがとな。そんなに探してくれてたのか。』

『いえ!虎徹さんに体のためにたまにはちゃんとしたもの食べていただきたいと思いましたし、何より、僕が虎徹さんと一緒に食事したかっただけなので…』

『バニーちゃんは優しいな。おじさん感激だわ。』

自分のことをこの上なく大切に思って、考えてくれていることがひどく嬉しかった。


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