『虎徹さんが嫌ならやめます…』
目映い輝きを持つ青年は愁いをおびてしゅんとした。
だが、次の瞬間…
『でも、僕たち付き合ってるのに今まで何もしてないなって!…だから…だめですか?』
『駄目じゃねぇけど…』
我ながら可愛げのない返答だった。
ずっと言って欲しかった言葉なのに…
『本当にですか!!だめではないんですね?』
バーナビーは飛び跳ねるかのような声色で反応した。
『おお!全然駄目じゃねぇよっ。』
その声色に乗じて自らも若干、いやかなり心が爛々とした。
こんなに好きだなんて…
『じゃあ、虎徹さんが大丈夫なら今度の日曜日の10時にジャスティスタワーまで来てください!』
『お、おう!ジャスティスタワーな!わかった!!』
『うれしいです虎徹さん…美味しいお店調べておきますから。』
うっとりとした声と眼差しでバニーは俺を電話越しにみつめた。
内心はそんなにみつめて欲しくはなかった。
本当に蕩けそうで蕩けそうで…
ココアかモカに無理に入れられたマシュマロのようで…
誰か、俺をどうにかしてくれっ
自分がどれほど罪な恋をしているかはわかっていた。
わかっていたけど…
おやすみなさい といつにも増してにこやかに笑ってバーナビーは電話を切った。
電話を切ったらなぜだか、たちまち絶叫のような笑みが溢れた。
『ははは…俺マジで大人げねぇな…』
うれしさとよろこびとかなしさとなさけなさが一度にあふれた。
自分の大人に成り果てた心情が自棄に切なくて、
切なくて。
何か熱いものがこみ上げてきた。
しんしんと、それは頬をつたってこぼれおちた。
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