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ツンデレーション




 降旗は考える。
 今自分の腕の下で身も世もなく喘いでいるのは、本当にあのキセキの世代の元主将なのだろうか、と。
「ァッ、あー、あっ……ああ、あ」
「い、痛い……? ご、ごめん」
 眉間に皺が寄り耐える様にシーツを掴む姿はひどく頼りなく、まさしく自分と同い年の少年だった。鍛え抜かれた筋肉が、律動にあわせてピクピクと痙攣する。そそり立った彼の性器から溢れた先走りが、へその当たりに溜まっていた。
 何かを訴えるようにこちらを見つめる瞳に、痛かっただろうかと腰を止める。すると彼はもどかしげに腰を揺らし、新たに目尻に涙を浮かべた。
「ん、ン……痛く、は、な……それ、よりッ」
「え、な、なんですか」
「……ン、ぁ、……なんで敬語なんだ! この馬鹿!」
「えっ……! だ、だって……」
 つながったまま、すごい剣幕で詰られて息を詰める。
 降旗だって、最初は敬語を使う気なんてなかったのだ。同い年なわけだし、今まで戦ってきた他のキセキの世代にも自分は敬語はつかっていない。黄瀬なんかはしょっちゅう誠凛に遊びに来るから、最近ではメールアドレスを交換してしまった。今度皆でスイーツを食べに行こうという話までしたくらいだ。
 しかし、赤司だけは駄目だった。
 ファーストインパクトがひどすぎたのも原因のひとつかもしれない。あの時は本当に怖くて、コイツの機嫌を損ねたら殺られる、とすら思った。もし、あの時火神じゃなく自分が異を唱えていたら、ましてやタメ口なんてつかっていようものなら、赤司は間違いなくそのハサミを俺の身体に突き刺していただろう。
 降旗はあの時の自分の判断は間違いではなかったと、確信を持っている。
 故に、癖の様なものだった。
 こんな、お付き合いをする関係になっても、身体をつなげても敬語が抜けないのは。
「け、敬語の期間長かったし……」
「敬語、じゃ、なくて……んぁ、ビビ、ってた、だけだろうが!」
「だ、だって赤司くん怖かった、し」
「……名前」
「う、赤司」
 涙目で睨みつけてくる赤司は可愛いと思う。下手くそな敬語を使う位ならタメ口を使え、そもそも同い年だろうと言ってくれたのは大分前だ。それでも身に付いた防衛本能とは不器用なもので、未だに赤司には下手くそな敬語まがいの口調で喋ってしまう。
 お前の顔と喋り方でくん付けされるのは気色悪い。呼び捨てにしろ。
 どうして僕の三歩後ろを歩くんだ、隣でいいだろう。お前は従者か。
 なんでいちいち謝るんだ、怒ってない時に謝るな、その脳みそは空っぽか。
 何かをしてもしなくても呆れたように罵られれば、敬語が抜けないのも仕方がないと思う。まして、口答えをしようものなら不機嫌になって何をされるかわからないのだ。
 たとえ、怒っている内容がひどく可愛らしい「もっと心の距離を詰めろ!」という内容だとしても、降旗はそれに気づかない。と、いうより気付けない。
 それに赤司がやきもきしていることにすら、降旗は気づいて居なかった。
「もう嫌だ……どうしてお前はそうなんだ」
「ご、ごめんなさい」
「敬語」
「ご、ごめん」
 怒られすぎて、すっかり萎えてしまった。
 赤司の中に入れたまましょんぼりとうなだれていると、その雰囲気を察したのか赤司が降旗を見上げる。
「僕は」
「うん」
「僕は確かに逆らわれるのは嫌いだ。僕がルールだという考え方を覆すつもりはない。でも、僕だって、友人には……多少甘い所はあると、思っているし、それに」
 だんだんと語尾が小さくなっていく。
 クエスチョンマークを浮かべながら先を促すように赤司の髪をなでれば、赤司はひどく不満そうに呟いた。
「少なくとも、恋仲の相手に距離を置かれたままは……気に食わない。これは一般的な感覚だと思うのだけど?」
 不安そうに目を泳がせながらそう言う赤司は可愛かった。
 言葉の意味を理解するのに数秒要し、その言葉の意味を正確に理解した降旗は赤司の予想外のいじらしさに心の奥がくすぐられているような、なんとも言えない感覚に陥る。
「あか、あか、あっ」
「なんだ」
 幾分か冷静になったらしい赤司は、行為中の色っぽい顔も、先ほどのいじらしい顔もしていなかった。絶対王者の表情で、ふてぶてしく降旗を見上げてくる。
「お前……可愛かったんだな……」
 しみじみと呟いた途端、赤司は不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「……抜け。死ね。くたばれ。土に還れ」
 途端バタバタと必死に下から抜け出そうとする赤司の腰を、なんだか嬉しくなりながら掴む。
「うんうん。ごめんね、ありがとな」
 身をかがめてキスをすれば、中の角度が変わったのか赤司が小さく喘いだ。
「もうちょっとしたら完勃ちすると思うから、続きしよ」
「死ね」
 眉間に皺を寄せながらも手を伸ばす赤司に、降旗はやんわりと笑みを返すのだった。



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