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仕方ない




「青峰っちー、桃っちと黒子っちのデート見に行かねッスか?」
 黄瀬にそう言われ、嫌々ながら連れ出された日曜日。桃井と黒子のほのぼのしているんだが、空回りしているんだか、そもそもデートなのかすらわからないそれを見せつけられた青峰は心底疲れていた。
 帰ろうと何度言ったかわからない。黄瀬は黄瀬で職務質問に遭い、かと思えば今度は桃井がナンパに遭う。黄瀬を助け出し、桃井をナンパしようとしていた奴らをそうとバレないように蹴散らし、黒子がぬいぐるみを渡すところまで見届けた頃には、青峰はすっかり疲労困憊でぐったりしていた。
「体力ないっすねー青峰っち。バスケではあんなにすごいのに」
「うっせー誰のせいだ、ボケ」
「あはは」
 そもそもの元凶である黄瀬は、なにやら楽しかったようで終始機嫌が良い。今も、「いやー、黒子っちなかなかやる男っすねー!」などと言いながら駅までの道を足取り軽く歩いている。
「あ、そだ。青峰っち」
「んだよ」
 くるり、と振り向いた黄瀬に投げやりに返せば、黄瀬は猫目をつい、と細めて笑う。
「俺ちょっと買い物したいんすけど、このまま付き合ってもらえないッスか?」
「はぁ!?」
 青峰は思わず頓狂な声をあげる。
 桃井と黒子のデートは一日コースで、今は夕刻だ。そろそろ帰らなければ夕食に間に合わないし、何より精神的にも肉体的にも疲労がひどい。一刻も早く帰って風呂に入って寝たい。
「やだよ。今日はお前の我侭に付き合ってやっただろうがよ」
「えー、いいじゃないっすか。一人で買い物すると女の子に捕まっちゃって大変なんすよ」
「死ね」
「ヒドッ」
 サラリとモテ自慢をする黄瀬に辛辣に返すも、まったく気にしていないようで再度お願いをされる。
 青峰は、黄瀬のお願いに弱かった。
 部活後の1対1でも何度黄瀬の「もういっかい」に付き合わされたかわからない。今日だって、黄瀬がどうしてもと言うから――とは言っても自分は最後に誘われたようだが――付き合ってやったのだ。
「お願い、青峰っち。俺とデートしようよー」
「デートとか気色悪いこと言うな」
「お願いお願いっ。なんならメシ奢るッスよ! ね? 青峰っちー」
「仕方ねぇなぁー」
 頭をがしがしとかきながら、仕方なく頷く。
 仕方ない、仕方ないのだ。
「やったー! だから青峰っち好きっす!」
 嬉しそうに笑う黄瀬の顔を見るのは、嫌いじゃないのだから。



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