昇降口に立った青峰は、げんなりとした気分で溜息をついた。昼間はあんなに晴れていたのに、顔を覗かせ上を見上げれば空から途切れる様子のない大粒の雨が降り続いている。
いつも傘を携帯しているわけではないが、何とも運が悪い。頼れる桃井も今日は先に帰ってしまった。こんなことなら部活後の自主練なんてしなきゃ良かったか、と嫌な考えがよぎったが、青峰はそんな邪念を消すようにすぐに頭を振った。
「お前、まだいたのか。」
この雨の中帰るのか、と半分諦めの気持ちに入りかけた瞬間、後ろから耳慣れた声が聞こえた。振り向けばつま先をトントンとコンクリートに当てながら、昇降口から出てきた若松が自分を見ている。
「…ひっでー雨だな。」
若松は、青峰の隣で空を眺めながら手に持っていた黒い傘を開いた。
「アンタ、傘とか持ってくるんだ。」
意外にも用意周到な若松に青峰は驚いたように呟いた。
「そりゃ朝の天気予報で降るっつってたからな。」
「…ふーん。」
少しつまらなさそうにしながらフイッと顔を背けた青峰に、若松は首を傾げる。
「(何拗ねてんだ…?)」
若松は顔を合わせようとしない青峰を横から見つめ、
「…あ。」
ようやくそこで彼の手に傘がないことに気が付いた。なるほど、なるほど。自分は持ってないのに俺が持って来てるのが気に入らないんだな…コイツ。それが分かると若松の心はなんだか軽くなり、ほっこりとした温かみを覚えた。
「青峰。」
「んだよ。」
傘を少しだけ横にずらし、若松は雨の中足を踏み出した。
「駅まで、一緒に帰ろうぜ?」
「っ、おう。」
並んで歩く帰り道。
いつもよりちょっとだけ距離の縮まった、そんな雨の日。
あとがき
梅雨ですねー…(>_<)この前までは急激な気温上昇で真夏のようだったのに。気象の変化に体がついていけてません。。多分青峰と若松は頑丈そうだけど…でもそう見えて体調崩しちゃったりするのが可愛い!!この後帰り道では…「青峰!お前肩濡れるからもっと寄れ!」「っアンタだってもっと傘そっち寄せろよ!」みたいなやりとりが…っていう妄想。
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