2




「センパイに、彼氏…?」



休み時間が終わりに近づくと、森山は放心状態の黄瀬の肩を軽く叩き自分のクラスへと戻って行った。何もかも、…いや、そこまでいろいろあったわけじゃないのだが黄瀬の頭はパニック寸前だった。



笠松が男に奔ったことには驚いたが、彼が自分で決めた恋愛なら黄瀬だって応援したいと思った。しかし、何故か笠松とその相手を自分が見守るという行為に、そして笠松に恋人が出来たという事実に、何だか胸の辺りがムカムカとし始めてしまったのだ。



「…もう、あんまり俺には構ってくれなくなっちゃうんスね。」



放課後寄り道をしたり、休日に一緒にバスケをしたり、暇な時間に電話をしてみたり。今まで当たり前だった彼との日常がたった一人の男の出現によって崩されてしまう。


尊敬している先輩を取られたようで、悔しいのだ。黄瀬は自分の気持ちをそう結論付けた。





チャイムが鳴り次の授業が始まってもそちらは全く耳に入らず、ぐるぐると笠松の事だけが頭の中を巡る。相手は一体どんな男なんだろうか。同性同士の恋愛上の付き合いなんて経験がないが、きっと男女が普通に付き合うようにデートしたり、キスしたり、…それ以上の、



別に笠松が誰とそういう行為をしようと、ただの後輩の自分には関係ないはずなのに、広がる想像とともに黄瀬の苛立ちと焦燥感はどんどん膨らんだ。



「センパイにとって良いことなのに。…何でこんなイラついてんスか、俺は。」



黄瀬は頭を抱え、そのまま机へ突っ伏した。