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※時間軸の捏造あり
何故か4月1日なのに平常授業で進行中。
黄瀬と笠松が同時期の4月に学校に存在。
訳のわからない設定ですが、それでも良いという方は是非読んでいってください…!







まるで子守唄のような古典の授業が終わり、黄瀬は大きな欠伸を零しながら背中をぐっと伸ばした。積み重なった眠気はなかなか抜けるものではなく、ぼんやりとしながら次の授業を確認する。



その時、廊下をバタバタと慌ただしく走る音が聞こえてきた。高校生にもなって誰か鬼ごっこでもしているのか、と呆れていたが、次の瞬間教室に飛び込んできた人物を見て黄瀬は目を丸くした。



「き、黄瀬…!!!大変だ!!!」



椅子やら机にぶつかり、よろけながらも黄瀬の元へとやってきた森山は目をカッと見開いた。肩を掴まれ至近距離で見つめられている黄瀬は、どんどん自分の心拍数が上がっていくのが分かった。ちなみに淡い恋愛中のような心のときめき…ではなく、これは恐怖からくるものに近い。それほどまでに森山の表情は迫力があり、凄まじかった。どちらかというと元々切れ目で涼しげな顔立ちの彼だから、尚更凄みがある。



「か…笠松が…!!!」


「っ!?」



"笠松"その四文字に黄瀬はすぐさま食いついた。森山の異常な様子から察するに、笠松に何か起きたのだとすぐに判断した。



「せ、センパイがどうしたんっスか!?」



ガタンッと椅子を倒して立ち上がる。先ほどまでは静かにぼけーっとしていた黄瀬の態度にクラス中が何事かと動きを止めた。一気に視線が自分達へと集まることでハッと冷静さを取り戻した森山は、この状況下ではさすがに言いだしにくいと感じたのか、黄瀬に廊下へ出るよう促した。



「落ち着いて聞けよ、黄瀬。」


「…は、はい。」



大きく息を吐いた森山は黄瀬に耳をかすよう手招きをした。そして小さな声で、それでいて重たく、言葉を発した。



「笠松に、恋人ができたらしい。」



「……は?」



二人を纏う空気が、ぴたりと凍りつく。



固まった黄瀬の口から、掠れた声が漏れた。



「な、何言ってんスか…?笠松先輩は女の子苦手じゃ、」



笠松がどれほど女子が苦手か、黄瀬はよく知っている。だから高をくくっていたのだ。笠松に「彼女」なんて無縁だと。そんなことは目の前の森山だって知っているだろう。



「そうだ、アイツは女子が大の苦手だ。…ただな、俺は今一言も笠松に彼女が出来たとは言ってないぞ。」


「…へ、…え?じゃあ、まさか…」



黄瀬の目を見つめながら、森山は一拍おいて告げた。



「彼氏だ。」