kitchen




備え付けの小さなキッチンに立つ彼の背中は、何だか別人のようだ。青峰はそんな事を思いながら若松を見つめる。



卵を溶く音、フライパンにひかれる油の音、そして時間と共に段々と顔ってくる匂いに、青峰はそわそわと待ち遠しさを感じた。





「ほら、できたぞ。」


どん、とテーブルに置かれたのは美味しそうに仕上がったオムライス。ほくほくと湯気が立っている。朝食にしては何ともボリュームが多い。が、昨日若松は青峰の事でバタバタとしていたため夕食をまともに取っておらず、空腹感が限界に達していたのだ。



身体の小さな青峰には量が多いかと思いきや、そんな様子は見せず、いただきますの声と同時にスプーンですくったオムライスをガツガツと頬張り始めた。青峰の様子を眺めていた若松から笑いが漏れる。



「お前、可愛いな。」


「…っ!?ふぁにいっへんらあんふぁ!(何言ってんだアンタ!)」


「いや、口に詰め込みすぎて小動物みてーだから。…つーか飲み込んでから喋れよ。」



睨みながら一生懸命飲み込む青峰の姿だって、もう可愛いく見えて仕方がない。若松は考えている以上に小さな青峰にハマってしまっている自分に、少し重症だと心の中でセーブをかけた。



「チキンライスのお代わり、いるか?」


「…食う!」



大きくなれよ、と兄の気分で言ってみたものの、実際アンタと大して変わんねーからと言われてしまえば苦笑いしか返せなかった。