彼と彼女と仲直り





今吉の遣いで青峰を探していた、若松の目の前を何かがもの凄いスピードで走り抜けた。



何事かと慌ててそれを目で追うと、ピンク色の長い髪が揺れながら遠ざかっていくのが見えた。



「も、桃井…?」



あまりの突然の出来事に若松はそのまま足を止め唖然と見送ってしまう。校門を出ていった彼女の姿は見えなくなり、若松の足がやっと動いた時には当たり前だがもう追うには遅かった。そして、桃井の走ってきた方向に向きを変え、その先に見えたのは今走り去って行った桃井の幼馴染。若松の探していた、青峰大輝だった。



「おい、青峰。」


「あ?…アンタかよ。何か用?」


「今吉サンに頼まれたんだよ。テメー呼んで来いって。」


「あー、はいはい。」



体育館に戻りながら、若松は後ろをついて来る青峰に話しかけた。



「桃井と喧嘩か?」



彼女のあの様子からして多分そうだ。揉めた原因に一つ心当たりのある若松は、少し前に終わったIHを思い出す。監督からの指示で試合に出れず暴れた青峰を自分も止めた。元々監督に青峰の身体の故障を伝えたのは桃井だったという事を知ったのだろう。



「IH、桃井が監督に頼んだのはお前のためを思ってだろうが。」


「…余計なお世話なんだよ。」



その返事に、やっぱりあの時の事か、と内心若松はため息をついた。意地を張る青峰の気持ちが全く分からないわけではない。自分だって同じ立場だったらやりきれない気持ちだっただろう。…しかし、



「お前の気持ちも分かるけどよ、あのまま試合に出てたら体壊してたんだぞ?間違いなく。」



口を閉ざしたままの青峰に、若松は向かい合うようにして立ち止まった。



雨がまもなく振り出しそうなのと桃井の行方が気になるが、彼女のことだから自分の気持ちが落ち着いたら帰ってくるだろう。こちらから探し回る事だってきっと望んでいないはずだ。



「ちゃんとアイツが帰ってきたら謝れよ?」


「…っ、」


「良いな?」


「…おう。」



ぽつり、ぽつり。



空から水滴が落ちてきた。



きっとこの雨がやむ頃には、いつもの二人に戻るだろう。







あとがき
仲直りシーンってなかったよな…と思って書きました。若松サンが背中を押してたら更に良い…!!!青桃も人気だけど、やっぱり私個人としては二人は幼馴染の枠であって欲しい。青若を桃井ちゃんが応援してくれるといいな〜!
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。