おまけ





「諏佐ー。」



雑誌を読む諏佐の背中に、先ほどまで横でスマホをぽちぽちと弄んでいた今吉が、全体重をのせてもたれ掛かった。もし今テーブルの上にあるコーヒーを手にしていたら間違いなく零していただろう。



「…いきなり何だ。」



読んでいる雑誌から目を離すことなく、諏佐は今吉に返事をする。



「若松からメール。お前んとこにも行っとるで。」



ずいっ、と差し出された画面を見れば宛先の欄には自分の名前が。諏佐の視点はそのまま下へ、本文へと移る。



"いろいろ迷惑かけてすみませんでした。近々青峰と一緒に詫びに行きます。"



「一緒に来るって事は多分上手くまとまったんだろうな。」



しかし付き合い始めたと明確に書かれていないところを見ると、直接報告したいのか、もしくは男同士の事情を打ち明けるのを躊躇っているのか。



どちらにしろ二人の態度で、両想いなのは自分達が在学中からすでにバレバレだったわけだが。



「若松は気にしすぎなんや。別にみんながみんな同性愛に偏見持ってるわけじゃあらへんのに。」



確かに、青峰を突き放していた理由もそこだろうと諏佐は頷いた。



「なぁ、今吉。」


「んー?」



この際だから、俺達もカミングアウトしようか。



自分たちの先輩が、実は高校時代から付き合ってました。なんて言ったらあの二人はどんな反応をするだろうか。



そんな諏佐の言葉に意味ありげに笑った今吉は、画面に返事を打ち込んだ。