頭で考えるより先に体が動いてしまうというのは、こういう事なのだろう。
「っざけんな…!!!」
青峰は勢いよく立ち上がり、若松へ歩み寄る。握った拳は少しだけ震えていた。
殴られる、のだろうか。若松は目の前に立つ青峰をぼんやりと見つめる。さっきまで流れていた涙も今は止まっているようだ。
「汚れるって、なんだよ…」
耳元で泣きそうな声が聞こえて、若松は身体を包む自分以外の体温に気づいた。
「周りの目だってアンタが居てくれるんならどう思われようが関係ねーし…!」
「っ、」
「何でマイナスにしか考えねェんだよ。良い事だって沢山あんだろ。」
「青峰、」
「っ若松サンが、好きなんだよ…!」
無意識のうちに、若松の手は青峰の頭へと伸びていた。捻くれてるのかと思えば実は真っ直ぐで、縋るように気持ちを伝えてきた青峰をこれ以上突き放すことなんて出来なかった。やっぱり惚れた奴には甘いのだ。若松はゆっくりとした口調で話しかける。
「もういい、分かったから。ちょっと落ち着け。な?」
「…う、っ」
「え、ちょ、泣いてんのかよ…」
肩の辺りの湿った感覚と耳元の啜り泣きが聞こえ、若松は青峰を少しだけ引き離した。覗き込んで見えたその表情は暴君なんて、とても言い難かった。
「青峰。」
「っな、んだよ…」
上手くいくかいかないかなんて、先の事は分からない。未来を作り上げるのは自分達次第なのだ。
だから、まずは一歩、逃げ出さずに正面衝突してきたこの男と向き合ってみるとしよう。
「お前が好きだ。」
瞬間、若松の胸元に、ぽすんっと青い頭が落ちた。
「遅せーよ、…バーカ。」
あとがき
もう少し早く終わるかと思ったんですが、ずるずると長くなってしまいました。そしてこんなに女々しい青峰を書いたのは初めてかもしれない…(笑)
これを作る上で結構考えてしまったのが、若松さんの実家はどこなのかということ。でも田舎が良いな、と思って青峰には遥々(?)出向いてもらいました!ちなみに若松父は疲労です。そんなに重症じゃありません!入りきらなかったのでここで補足。おまけも書く予定なので更新の際には読んでやってください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。