「無理だ。」
絶対に大丈夫だと踏んで柄にもなく、一世一代の告白をした青峰に対する返事は、彼の期待していたものとは反するものだった。
「何でだよ。」
「何でって、…無理なもんは無理だ。」
「アンタ俺のこと好きだろ?俺も好きだっつってんじゃん。」
「っ、別にお前の事なんて好きじゃねーよ。」
ぴくりと反応したのはほんの一瞬で、突っぱねられるように顔を背けられた。
何で。自分の勘は間違ってなんかいない。好きじゃないなんて絶対嘘だ。あんな熱い視線を送られて、気づかないはずがないだろう。
おまけに明日、目の前の彼はこの学校を去ってしまうのだ。青峰がこの桐皇に入学してもう二年。時が経つのは本当に早かった。
「どうしても無理なのかよ。」
「…あぁ。」
断られた事とやるせなさから来る焦燥感で高ぶってしまう気持ちをその場は無理やり抑えたがこれで、あぁ、そうですか。とすんなり諦められるはずがなかった。やっと自分も自覚することができた。時間は掛かったが好きだと認めることができたのだ。
若松はこのまま県内の大学に進むと聞いている。これでさようならなんて、あり得ない。絶対その首を頷かせてやると、青峰は内心張り切っていた。
しかし、そんな青峰の決意も空しく散ってしまう事となる。
翌日の卒業式の直後、若松孝輔はぱたりと青峰の前から姿を消した。