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夕方に近づけば、空はだんだんと影を落とし昼間の明るさはどこかへと消えていた。館内を巡り外へ出ると、カップル達が敷地内の一方向へと向かって歩いている。どうやらそろそろイルミネーションの点灯が始まる時間のようだ。
「どうする?」
横に立つ青峰は突然触れた空気が冷たいのか、顔半分を羽織ったダウンジャケットに埋めながら、もごもごと返事をした。
「せっかくだし、見てこーぜ。」
青を貴重としたLEDライトに象られた海の生物達のモニュメントは昼間とは打って変わり、暗闇の中輝かしく君臨していた。時折混ざる白いライトが海の波や光の加減を表している。
そんな幻想的な空間に目を奪われている若松の指先に、冷たいなにかが触れた。
「……いーの?」
触れたモノは青峰の指だった。特に反応のない若松に 伺うような視線が向けられる。
「お前の手が冷たすぎるから仕方なく、だ。」
今だけだからな、という言葉と共に握り返した若松の横顔はとても優しいものだった。
「若松サンの手あったけェな。」
イルミネーションに照らされる中、繋がる二人の手に気付く者は誰もいなかった。