ささの葉さらさら
のきばにゆれる
お星さまきらきら
金銀砂子
すれ違う親子が楽しそうに口ずさんだその歌に、ようやく今日が何の日か改めて認識させられた。7月7日―七夕。そして本日は自身の、緑間真太郎の30回目の生誕日である。
住宅街の軒下をゆっくり歩きながら、緑間もぽつりぽつりと歌を溢す。
(「運命を信じる真ちゃんにはぴったりじゃん。」)
今はもう無い、あのチャリアカーを漕ぎながらにかりと笑った顔を思い出した。あれは何年前だっただろうか。きらり、と道路の水溜まりが反射する。水面に映る夕日の光に目を細目ながら、緑間はぼんやりと呟いた。
「会いたい、のだよ。」
赤、黄、青、紫、桃、水色。
今も代わらず大事な旧友である彼らからは、もう祝いの言葉と贈り物をもらっている。直接会いに来てくれた者。仕事の合間を縫って電話やメールをくれた者。緑間だってひねくれた部分は相変わらず健在だが、心有る人間であることにも代わりはない。純粋に仲間たちに祝って貰えることは、いくつになっても喜ばしく、嬉しいことだった。
ただ、緑間の心は満たされていない。心の真ん中を埋める、決定的な何かが足りないのだ。
あと一色、
目の前に広がる夕日のような、あの橙色が。
「……た、」
「あれ、真ちゃん?」
溢れだしかけた緑間の気持ちを止めたのは、紛れもなく彼の声だった。
緑間はゆっくりと振りかえった。何故お前がここに、とでも言わんばかりに目を見開いたまま立ち尽くした。
「お前、今日は先方の都合で帰れないと…」
「うん。そのはずだったんだけど何かあちらさん都合悪くなって、後日改めてで良いかってさ。」
今年は無理だと思ってたけど、まさかこうも都合よく毎年事が運ぶなんてな〜、と続けながら高尾は緑間の横へと並ぶ。
「今日も人事を尽くしたからな。おまけに蟹座は一位だ。」
緑間が鞄から取り出したのは、今日のラッキーアイテム―――オレンジ色の折り紙だった。半分に畳まれ、紐の通された紙の裏には何やら文章が書かれているようだが、高尾の位置からはどうにも見えにくい。
「願い事、何て書いたんだよ?」
「ふん。見せたら価値が下がるだろう。」
「なんじゃそりゃ!」
二人は肩を並べて共に暮らすマンションへと向かう。緑間はふと隣の彼の瞳と同じ色をした空を見上げた。毎年雲に隠れてしまう星空。だが今夜はあの消えかけている橙の夕日が、きっと綺麗な天の川を運んできてくれるだろう。
「真ちゃん」
「ん?」
「誕生日おめでとう!これからも一緒に居ような!」
「……ふっ、当たり前なのだよ。」
『高尾と共に、幸せな日々を、過ごせますように。』
あとがき
遅くなりました。。
真ちゃんハッピーバースデー!!!
2015年初誕生日ネタです…
年齢捏造もっと活かしたかったんだけど、うーん、難しい。
そのうちまた挑戦してみます!
実はこれシリアスverもあったりするんですけど、まぁそれはまたどこかで!
次回作もよろしくお願いします〜!