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※オリキャラが登場します



軽く扉をノックする音に、青峰は素早く反応した。別に、もしかして若松が戻ってきてくれたのかも。なんて甘っちょろい考えに走ったわけではない。しかし、部屋の外から聞こえた馴染みのある高めの声に、青峰は自分のテンションがひゅるるるる……と下がっていくのを実感した。



「…さつきかよ。」


「若松主将じゃなくて残念?」


「ちっげーし!」



ふいっと拗ねたように顔を背ける青峰に、桃井は小さく笑みをこぼす。



「さっきね、主将から電話がきたの。」


「は?」


「自分が一緒に出掛けられなくなったから、青峰のこと頼む!って」



桃井の話しを聞きながら、青峰の中ではふつふつと怒りが込み上がっていた。わざわざ桃井に連絡をするとは。ほかの奴に押し付けるなら最初から構ったりなんかするな。それに今日だって本当は自分の方が先に…



「大ちゃん?」


「っ、なんでもねーよ!それより…テリヤキバーガー食いたい。」


「もー。そういうのばっか食べて!」



自分より他人を優先させる若松に苛立ちは募る一方だった。しかしその根本にある気持ちに、まだ青峰は気づかない。







「それでよー、アイツが…」



ポテトを摘みながら話し続ける若松に、田島は何故か返事の代わりに妙な笑いを返した。



「なんだよ、さっきから変な顔して。」


「いや…だって若松さぁ…今日青峰君の話ばっかしてんだもん。」


「え、っ…」



驚く若松に、自分で気づいていなかったのかと田島の口から溜息が零れる。この経った数時間で全く青峰と接点のない田島がそんな彼について詳しくなる程だった。もう青峰、ではなく「アイツ」で通じてしまう。



「何だかんだ文句言ってるけどさ、可愛がってんだな!」



その言葉に、若松は一瞬息をとめた。確かに、可愛いとは思う。だけどそれは今のサイズだからであってそれが元に戻ったらまた犬猿の仲になるのだろう。



「別に俺はっ、」



―その時。



ちょうど店に一組の客がやってきた。ピンクと青の見覚えのあるカラーが視界に入り込み、顔を上げた若松はぴたりと固まる。



「若松?おーい、どしたー?」



自分を呼ぶ少し大きめの声が届いたのか、それとも偶然か、若松の想像通りのその二人は揃ってこちらを振り向いた。