「事件だ。」
暗がりの部室の中、レギュラーメンバーを集めた青峰は声を潜めて一言告げた。
「急に呼び出して何やねん。」
一同クエスチョンマークを浮かべつつ小首を傾げている中、若松はただ一人居心地悪そうに顔を歪め、閉ざしていた口をゆっくりと開いた。
「あの、そんな大した事じゃないんすけど…実は俺の、」
「若松サンのPNTがシャワー中に…何者かによって盗まれたんだ!!!!!」
「「………は?」」
聞き慣れない単語に再び三人は首を傾げた。
「ス、スイマセン!PNTって何ですか…?ほんと分からなくてすいません!!!」
「俺も聞いた事ないな。」
「ワシもや。」
「あ!?んなもん、パンツの略に決まってんだろうがっ!!!」
「「パンツ!?!?!?」」
青峰は腰に手を当て、深いため息をついた。
「ったく、若松サンが恥ずかしがると思ってわざわざ略したのによー」
「変に略してんじゃねェよ馬鹿!そっちの方が恥ずかしいわ!!!」
騒ぎ始める当事者の傍らで、集められた残りのレギュラー陣三人はいたって冷静に状況を確認していた。どうやら話を要約すると、若松が体育館備え付けのシャワーを使っている間に下着が紛失してしまったということらしい。
「…まぁ、とりあえず探してみないことには何も始まらないな。」
「せやな。盗まれたかどうかもまだ分からんし。」
五人が互いに視線を重ね合わせると、青峰は大きく息を吸った。
「ではこれより、第一回若松サンのPNT捜索を開始する!!!」
「…第二回目以降もあるんかい。」
こうして青峰率いるレギュラー陣で、体育館周辺および寮の周辺捜索が行われた。
しかし、どこを探しても若松のPNTと思われる布地は見つからず、時間だけが刻々と経過した。
「くっそ…やっぱ盗んだ奴が持ち帰ったのか!?」
「青峰…。もうしょうがねェよ、パンツの一枚や二枚。」
「しょうがねーで済むかよ!アンタのPNTが誰かの手に渡ったかと思うと…俺は!!!」
「っ、お前、そんなに俺の…」
「若松サン…!」
「俺の、俺のパンツを心配してくれてたんだな!けど良いんだ、パンツなんてまた買えば!」
「いや、そうじゃなくて、パンツの心配っつーか…」
「そうでもこうでも気にするな!俺のパンツならきっとどこに行ってもやっていける!」
「あ、いや、だから違くて…」
その時何か考え込んでいるような仕草を見せていた諏佐がふと思いついたように若松を見つめた。
「なぁ若松。下着を盗まれたってことはお前今…ノーパンなのか?」
いくつかの視線がバッと音を立てるかのように、一斉に若松へと向く。(下半身)
「ぶふぉっっ!!!…はっ!すいません!変な想像してしまってホントすいません…!!!」
「桜井、とりあえず鼻血拭こか?」
突如出血多量に陥った桜井に、今吉はすかさずティッシュを渡した。
「ちょ、アンタら変な目で若松サン見てんじゃねーよ!つーかこの人別にノーパンじゃねーし!!!」
「ひぃいぃぃぃぃ!スイマセン、スイマセ……え?」
「「ノーパンじゃ、ない?」」
固まる三人に、何故か青峰はドヤ顔で鼻息をフンっと鳴らし、若松は顔を真っ赤にして俯いている。
「青峰、どういうことだ?」
「どうもこうもねーよ、なんせ若松サンは…」
「ま、待て青峰…!」
若松は慌てて青峰の口を塞ごうとしたが、もう遅い。
「若松サンは今、俺のPNTを履いてるんだからなっ!」
「「・・・。」」
無言の空間が訪れる。
青峰のドヤ顔を余所に、若松は羞恥で座り込み、他三名は何も言う術がないというように冷ややかな視線を送った。
「なんだよアンタら、そのシラけた目は!」
「お前…とんだ変態だな。」
「もうええわ。後は二人でイチャコラしとればええよ…」
「…すいません、僕もそろそろ。」
三人はくるりと背中を向けると、静かにその場を立ち去った。
「お、おい…!待てよ!」
「青峰、あんだけ探してくれたんだ。もういいよ。」
納得いかず膨れっ面の青峰を尻目に、第一回PNT捜索はこれにて終了となった。
「予備の下着でも買いに行くか…」
「是非ともご一緒させてくださいっっっ!!!」
「お、おう…」
おわり
あとがき
椿姫様、リクエストありがとうございました。数ヶ月単位でお待たせさせた上、このようなグダグダな作品になってしまったことをここでお詫びいたします、すみませんでした(;_;)とりあえずほかの桐皇メンツを出してイチャコラさせようと思ったんですが、あれよあれよと路線を外れ(笑)
また訪問していただけると嬉しいです。
…え、パンツの行方?
それはおまけにて(笑)