こんなに綺麗な人間を見たことがないと言えば多分大袈裟なのかもしれないが、やっぱりそう思ってしまうんだから綺麗なんだと思うのだ。
綺麗なものは好き。
最近更にそう感じるようになったのはきっと俺が綺麗ではない世界を生きていたから。
そのせいで失ったものも多いが、そのお陰で得たものも多い。俺にとって大切な存在が一度に沢山できた。
そんで、何よりも
バスケが俺に戻ってきたことだ。
そして
誰よりも最初に汚い俺を迎撃したのは、
そのバスケに愛された
何よりも綺麗な男だった。
すきだ
どこが?と聞かれて全部すきと返せるような人間じゃないから、大抵「顔」と答えて額にキスをする。
答えにくい時にはこうやって話を逸らす癖を、こいつは見抜いている。必ずむ、と眉間に皺を寄せて不機嫌そうにむふぅと息を吐く。
そんな流川をいなす様に、流川の身体に腕をぎゅ、と回した。
驚いて少し硬直してるところが面白くて、腕の力が強くなる。
「俺さ、思うんだよな」
「…何?」
「お前、食べたら絶対旨いって」
「…なんでそう思う?」
「わかんねーけどさ、俺お前だったら残さず綺麗に食べれると思うんだよ」
もしや、愛って奴なんだろうかね?これは。
くっさいセリフだとは分かっていても、信じたくなる、純情乙女みたいな、俺がここにいる。
はっずかしーことだけど、本当だから…しょうがない。
「…じゃあ」
「ん」
「俺が死んだら、ちゃんと食べて」
「…当たり前だろ、誰にもやらねー」
こんなに綺麗なお前なんだ、誰にも譲るつもりは無い。
多分、俺は顔を最後に残すんだろう。
なんてったって俺は面食いだし、何より好きな所と言い張ってる訳だし。
バスケしてるとき以外は寝てるだけあって真っ白な頬にかぷりと歯を立てれば、其処はほのかに紅く染まる。
原始的と笑われそうだが、これこそ所有印っぽくて良い感じだ。
「俺より先に死ぬな」
「どうかな…お前より二年も長く生きてるからな」
「たかが二年だろ」
違いねーって笑っても、あいかわらず無愛想は治らない。
別に俺の言動がくだらない、とかそんな事を思ってる様では無いだろうけど、あまりの笑わなさにこちらがおかしくなってくると言うもので。
思えばどんなテレビ番組を見てたって、どんなNBAの白熱する試合を見たって、微動だにしないでちょこんと座ってやがるだけなんだ。
「おい、笑ってみろ」
「…またくだらないこと言う」
前言撤回、弁解の余地ナシ、ノーコメント。
かわいげの欠片も無いこいつがやっぱ俺は嫌いだった。
「死ぬときに」
「あ?」
「三井先輩がそばにいたら、多分最後に、笑う」
…と思う。って消え入りそうにボソッと言われた語尾は聞こえないフリをしておこうか。
死ぬとき?あんなこと言っておいてなんだが、お前より長生きできる自信が無ぇってのが本音だ。
だって、時々人間かどうか疑いたくなるからな、流川。
しかも、俺はそんな悠長な人間でもない。
「いーよ、ちゃんと生きてる間に見てみせるから」
「…できるもんなら」
あぁ安西先生にバスケの神様。
どうやら俺はこのバカに大層のめり込んでしまった様なんです
.向き合いながら残虐でいたい
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いちばんはじめが流三です。
いきなり撃沈してますが、よろしくお願いします。