普段はへらへらと生きていたり、特にやりたい事も見つからず普通に生活していたり、汗を流して部活動に励んだり、様々な学生がいる湘北高校の生徒を最も苦しめるものとして、まず最初に上がるのは考査試験である。そして、駅前のファミレスの一角、向かい合って頭をかきながら必死に一枚のプリントと格闘している二人組も同じ様に現在進行形で苦しんでいた。
半分程食べて机の端に追いやられてしまったドリアは冷めてしまっているし、空になったグラスは放置されたまま、早二時間が過ぎようとしている。

「……」

「あーくそ、なんで間違ってんのかわかんねぇ…」

「……」


そんな中で、一人ポテトを摘みながら宮城は哀れんだ目で向かいの上級生を見た。
可哀想と感じない訳では無いが、面白いと思う割合のほうが遥かに脳内を占めていることは否定できない。
頼むからこういう三年生には成るんじゃないぞ、と現キャプテンの自分は後輩達(若干二名)にきつく言う使命がある、とひしひしと感じるのだ。

そういえば8月31日はいきなり家に来たかと思えば課題の手伝いを無理やり任せてくるし俺が必死こいてやってれば偉そうに鼾をかいて寝ている男である。こんな時くらい死ぬ気になってもらわないとこちらとしても報われないというものだ。

最近知ったのは、授業中は眼鏡をつけていること。近眼ぎみなのは三井家に代々伝わる遺伝として常識らしい。
そりゃあ眼鏡姿を見られるのはなかなかレアもんで(しかも黒縁ときた)、それを近くで見れる俺もラッキーだとは思うけど、不満はそれなりに溜まるわけでして。
正直こんなファミレスに来てまで切羽詰まるほど今回のテストはやばくも無い俺は、普段の生活態度が優良だからこそだろう。しかし困るのは、俺がいくら出来ても三井サンは相変わらずの綱渡り状態なことだ。

結局の所、どうやら俺は三井サンに笑って欲しいし泣いて欲しいし怒って欲しいし拗ねて貰いたい様であり、当たり前だがそんな余裕がある筈もない。分かってる、でもこうして心の中で願ってしまうのは何でだろう?いつからそんなおとめちっくになってしまったのか、あぁそうだこの人に会ってからなんだろうな。そんな事を仮に本人に言ってしまえば、きっと鼻で笑って親指を地上に向けて真っ逆さまに突き落とすだろうから、言わないでおくけど。そんなことをされてそれでも一緒にいてやる俺ってやっぱり寛大なのかもしれない。

だけど、何か寂しく感じてしまうのは仕方が無いことなのかもしれない。その理由を俺は知ってしまったからで、どうすれば良いかも実は知っているからだ。三井サンが笑うのは、怒るのは、泣くのは、拗ねるのは、悔しいが全てあれの所為だから。
本当は、俺よりこの人の方がよっぽど強く思っていることかもしれないけど、



「俺さ、何が足りないのか分かったよ」

「…いきなり何だ」

赤ペンを持ったままの体勢で、漸く三井サンは顔を上げた。その顔が少し久しぶりに感じてしまうなんて、変な話である。

「ダッシュとか疲れるから嫌いだし、2メンもやだし、キャプテンて立場もなんだかんだ責任重いし、嫌なんだけどさ、いざ無くなると毎日つまんなくて平凡で寂しくなるんだ」

「…む」

「俺はアンタと勉強会も楽しいけど、」



嗚呼、眼鏡は大事なポイント、でも、今回はここまでに。



「アンタとならコートを走り回ってるほうが好きみたいなんスよ、俺」



ぼん

音に例えたら大体そんな感じで、
べつに変な意味で言った訳でもないのにみるみるうちに三井サンの顔が赤くなるもんだからこっちまで恥ずかしくなってしまった。

しばらくの間の後、いきなり伝票を掴んで立ち上がった三井サンは手早くカバンを肩に掛けてスタスタとレジへ向かって行く。小さく『バカだろ』と呟いたのが聞こえた。

その一声にやっと時計は動き出して俺は慌ただしく支度をする。もう散らかしていたペンを入れることさえもどかしい!
バタバタしてるうちに三井サンは会計を済ましてしまい尚もさっさと歩いていってしまう。

「ちょっと、どこ行くの!」

「どこでも良いだろ!」

聞いてみたものの大方の予想は既についている。もう何度も行き慣れている、奥まった場所のコートだろう。
三井サンの両親には、少しだけ申し訳無い事をしたかもしれない。やっと勉強し始めてくれたのを速攻で横道に逸らしたのは他でもない俺ですから。
部活が無い日も案外良いかもしれない。

一瞬後ろを気にしがちに振り返った三井サンが、今日見た中で一番楽しそうな顔をしていたことが嬉しくて、俺も気持ち悪いほどの笑顔で後ろを追った。







発展途上の心臓なのです





*****
寿ぶりの更新が
またもや意味不文…
とりあえずバスケが好きなんだけど
三井サンのことも大好きなリョータといきなり好きとか言われてテンパる三井サンてことで勘弁してください(何を)
どうしても×にならないんですけど
いちゃつかせるには
どうすれば良いんですか
なんというか
いつもこんな終わり方にしかならない…
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -