愛ってやつはまったくもって、素晴らしいものなのだよ。
存在なしでは生きてゆけないし、そもそもこの世に生まれることもない。どんな形や色や匂いだっていい、どんな方法でもどんな結果でもいい。愛こそは全てだ、そうじゃないか?
The frog in the well knows nothing of the great ocean.
「うん。それはもう分かったからジェームズ。……で?」
「まあまあ、座ってお茶でもどうかなお嬢さん」
にこにこと爽やかな笑みで椅子を引いてくれるジェームズ・ポッター。うさんくさい空気をまとっているのに、こういう所作が見事に絵になるのは育ちのせいなのか。
不思議な組み合わせの茶会ゆえ、ナマエ・ミョウジは談話室の方々から妙な視線が向けられているのをひしひしと感じていた。(彼がリリー・エヴァンズひとすじなのは公の事実のため、シリウス・ブラックのときのような誤解は起こらないだろうが)
「シリウスのことならもう気にしてないよ。彼が悪いわけじゃないし」
それは良かった、とジェームズはうなずく。
「でも今日はその話じゃないんだ。ちょっと聞きたいことがあってね」
「リリーのパジャマの色とか?」
「あー……それは……ウン、非常に興味深いところだよね、ぜひとも……。あ、クッキー食べるかい?」
「(俄然瞳がきらめいたよコイツ)」
「ええと、まあパジャマの件はあとで聞くとして。実はリーマスのことなんだけど」
ジェームズは改まった様子で、声のトーンを少し落とした。
ナマエはクッキーをもりもりと食べながら(すごく美味しいチョコクッキーだ、どこで買ったんだろうと考えつつ)、昨夜の夕食の会話を思い出していた。
「それって深刻な話?」
「まあね。そりゃリリーのパジャマだって、十分深刻な話だけど……」
「もしかして、彼に恋してるのか、とかそういう話じゃないわよね」
急に顔をしかめたナマエを見たジェームズは、さきほどとはどこか違う雰囲気でぱっと顔を輝かせた。紅茶のカップを机に下ろし、ちょいちょい、と手招く。首を傾げながら身を乗り出すと、彼はさらに静かな声でこう云った。
「リーマスがちょっと特別なんだってこと、きみ、気付いてるだろ?」