忌まわしい悪夢よ、災厄よ、悪霊退散じゃなくてエロイムエッサイムじゃない、痛いの飛んでいけ、でもなく……こういうときはどうするべきだったか?
ナマエ・ミョウジだかつてないほど、必死で考えていた。
The frog in the well knows nothing of the great ocean.
「というわけで助けてください」
「きみは僕のことを勘違いしていないか……?苦情受けつけ係か何かと」
「セブルス、四の五の云わずにファイツ!」
顔色の悪いことに関しては他の追随を許さないスリザリン生、セブルス・スネイプは、いつもより更に顔色を悪くして”例のもの”をじっと見つめた。
そう。あの、ナマエの教科書の上にこんもりと盛られていた、アレである。
「しかしこれは本当に……タピオカか?」
こんもりと盛られた黒いタピオカ。机の上に黒いタピオカ。魔法史の教科書上でテラテラと光る黒いタピオカ。あの羽ペンにもそのインク瓶にも黒いタピオカ。
つまりナマエの鞄の中にいっぱいの(以下略)。
「そうよ、まぎれもないタピオカよ……一見して大きいカエルの卵かと思わせておいての、ブラックタピオカなのよ。これはある意味、カエルの卵よりも陰湿だわ。許せない、えげつない、もったいない!こんな鞄いっぱいのタピオカを前に、わたし一体どうしたらいいの?」
「訴えろ。ブラックを」
「だってシリウスに近づくだけで、今やこのタピオカ地獄!見たでしょ!あいつら人の命なんて何とも思ってないのよ!話も出来なきゃ文句も云えないし寮には居にくいし、こんなグロテスクなもの見たせいで鳥肌立っちゃって、食欲まで失ったのに!!」
「(だからって何故タピオカなんだ)何なら紹介してやろうか。腕のいい弁護士を……」
張りつめていた糸が切れたのか、ナマエは泣き出した。