もしかすると、いや、もしかしなくとも非常にまずい事態だ。たぶん、自分の中で何かが完全に壊れた。ナマエ・ミョウジはそう思った。
冷静さを突き通すはずが、ここぞというところでヒステリックになり、捨て台詞を吐いて逃げ出す始末。自分は一体、どれだけ最悪な人間なのか。
「マルトノ、どうぞわたしを罵ってちょうだいな。むしろブタと呼んで」
ナマエは自己嫌悪の竜巻の中心にいた。フクロウ相手に愚痴をこぼすほどだった。
「……おまえ……それはヤバいと思うぞ。さすがに痛すぎるだろ、それは」
「うわ、シリウス……。フクロウ小屋に何か用?」
「(今うわって云われた)」
どこからか現れたシリウス・ブラックは、床に落ちているフクロウの羽をわさわさと蹴り飛ばしながら、こちらへ近付いてきた。手紙を出しに来たわけではないらしい。
「悪い風邪でも流行ってんのかね。なんか今日はおまえも変だし、エヴァンズも変だし、リーマスも変だし、ジェームズは……アイツはもともと変人か。ピーターは普通だな、うん。普通」
ピーター・ペティグリューの扱いに対し、つっこむ気力も起こらない。
「だから唯一まともで健康体な俺がだな、奉仕活動でもしようかと思ってさ」
「奉仕?」
「あー……ほら。この前のアレは俺が悪かったから、相談くらいは乗ってやる」
まあ、聞かせてみ?と小首を傾げるシリウスを見て、なんといい奴なのかとナマエは感動した。妙にじんときて、ちょっと泣けてきそうなほどに。
隣に腰掛けたシリウスの方から「どっこいしょ」と年寄りじみた声が聞こえたのは、気のせいだろうと思うことにした。