The Frog in the Well | ナノ


が徐々に晴れわたってくるころ、ナマエ・ミョウジは梟小屋にいた。
彼女の寝付きはさながら喜寿を迎えた老人のようなものなので、こうして早朝に起きだしては手紙を書いたり、散歩をしたり、ラジオ体操をしたりと素敵なモーニングタイムを満喫するのである。

「ほーら。オンドマルトノ、ビスコッティをお食べ」

『ホグワーツのパーフェクト少年とのゴシップに悩まされたりとスリリングな日々を送っていますが、その他はすべて順調です。ごしんぱいなく!』と家族にあてた手紙を書き終え、ナマエは窓の外を見下ろした。

――あそこを、

ときどきこの時間に、いや、たぶん周期的に”彼”は通ってくるのだ。そしてそれを、ナマエは何度か目にして知っていた。
冷えた花壇の脇の芝生を、ゆっくりゆっくりと踏みしめるように。
どうしてか、ひどくぼろぼろの格好で、ひょろひょろと力なく。

それがリーマス・ルーピンだと気がついたのは、ほんのつい最近のことだ。それは寮友のリリー・エヴァンズにしか話していない、ある種の秘密だった。ときどき彼がこしらえてくる不自然な怪我についてだって、強く言及したことは一度もない。
自分はとても卑怯なのだ、とナマエは思う。
境界線を引かれると大人しく下がってしまう自分は、ずるいのだ。たとえば彼が何か大きな問題を抱えていたとして、それを友人の誰かに少しでも、ほんの小さな針の穴ほどでも、気づいて欲しいと思わないわけがない。リーマスの様子は明らかにおかしかった。もしも杞憂だったとしても、これはある種のタイミングなのかもしれない、とナマエは考えた。

たぶん、自分が見つけたからにはそうすべきなのだ。
それで少しでも痛みが消えるならば、自分がモルヒネになるべきだ。

すべてが順調になるのはもう少し先のことになりそうだ、と括りつけようとしていた手紙をポケットにしまうと、ビスコッティを食べ終えた梟のオンドマルトノが不機嫌そうに鳴いた。

8. Red Sees Red



 

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