The Frog in the Well | ナノ


り返ったナマエは何とも云えない顔をして、ポリッジを食べようとしていた手を止めた。

「……何だよ?」
「べつに。おはよう」
「ああ。ジェームズ知らね?リーマスと飯食うって先に行ったんだけどな」

「ほら、ジェームズは?」とナマエ・ミョウジがリリー・エヴァンズに意味深な視線を送るが、彼女はそれを無視してサラダを食べている。シリウス・ブラックが何気なくナマエの隣へに腰を下ろすと、今度はリリーが妙な目配せをし、ナマエが思い切り顔をしかめる、という不思議なやりとりが繰り広げられた。

「なに。おまえら喧嘩中?」
「「ちがう」」
「そこのトースト取ってくんない?」
「「断る」」

空腹に突き刺さるステレオ。仕方なく、そのあたりのゴブレットへ手を伸ばすと、ナマエが「もうポリッジでも食べてりゃいいのよ!」と、なぜか怒りながら皿を押し付けて来た。
……これはなんだ、アレか。おまえ俺のこと確実に好きだな。
シリウスは思わずナマエの横顔をじっと見つめた。

「あらリリー。噂をすればのご登場、ですよ」

ポリッジを前に考えあぐねていると、ナマエがリリーの背後へ目を向けた。彼女は赤毛をぱっと揺らして振り返るなり、ものすごい勢いで席を立って――逃げた。無表情だった。後ろの扉からは、ジェームズ・ポッターが入って来るのが見える。
残されたテーブルではナマエが紅茶を飲みながら、何事もなかったかのように「だれかロマンティック止めて」とかなんとか呟いていた。無表情でだ。

「やあ、シリウスとナマエ。おはよう……」

何だか知らないがしゅんとしているジェームズの傍らに、リーマス・ルーピンの姿はない。ジェームズは彼にも逃げられたようだ。なんて役に立たない男だろう、メガネをかけているくせに。

「むーねがーむーねがーくーるしーくーなるー(コーラス:くーるしーくーなるー)」
「ピーターはすぐ来るって……おいナマエ。その歌なんかむかつく」
「シリウスあのね、リリーは僕についてね、何も云ってなかったってさ……!」
「そいつはよかったな」

シリウスはこの瞬間ほど、はやくピーター・ペティグリューに現れてほしいと思ったことはなかったという。

6. Blue Devils




 

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