ちょっとね、作戦を変えたらしいの。
頬杖をついてため息を吐く、物憂いリリー・エヴァンズの姿にはヴィーラもうっとりするんじゃないだろうか。ナマエ・ミョウジは、日に2度はこの友人に見蕩れることがある。しかし、今まで無視され続けてきた人物が食事の話題にのぼるとは、と内心で舌を巻いたのも事実だ(これはかなり脈ありなんじゃないかしらね、ジェームズ)。
「……のろけなら余所でお願いしま」
「ナマエ、」
美人が凄むと恐ろしい。それでも心なしか照れているような表情がまた愛らしいのだから、美人とは困ったものだ。同時に、なんて不平等だとも思う。
先の図書館デート(リリーは頑なにデートではないと否定するが)の一件で、普段はヘラヘラしているジェームズ・ポッターが、どうやら二人きりになると”ちょっとロマンチックになる”のだということが分かった。
「ふうん、ロマンチックね。ジェームズ・ポッターが、ロマンチック……プッ」
「笑ったわね」
「笑ってません」
どうやら彼女は、そんな彼にほんの一ミクロンでもときめいてしまった自分に苛立っているらしい。かわいそうなジェームズ。
「そういうあなたこそ、どうなの。シリウス・ブラックは」
「いや、何でそこでシリウス?」
「最近仲良しでしょ。よく楽しそうに話してるところ、見てるわよ」
「そんな……どうしよう、ホグワーツの女子の80%が敵に回る!」
不思議がいっぱいホグワーツ、いつどこから毒の吹き矢が飛んで来るかわからない。今日から目を開けて眠る訓練を開始せねばなるまい、とナマエはスプーンを握りしめた。
「ほら、噂をすればのご登場」
「え?」
振り返ればそこに。