寒い寒い、冬の季節。
雪がちらちらと舞い、静かな朝を迎えた孤島の館。
かつての当主の書斎で、主が愛した魔女が部屋の窓からその景色を眺めていた。
灯りの無い部屋の中、ベアトリーチェは窓に手をあててじっとしていた。
その蒼眼には、果たして景色が映っているのか。
「寒いな…」
その呟きと共に白い息が浮かんだ。
肩を縮こませながら手に息を吹き掛ける。
なにか、温かくなる魔法は無かったか…
そんなもの直ぐには思い浮かばないわけで。
「はぁ、」
「ベアト?」
「うん…?」
振り返ると戦人が近付いてきていた。
羽織っていたマントを脱ぐと、ベアトリーチェの凍える肩に羽織ってやった。
思ったより重量のあるマントを肩にして、改めて男の子だな、なんて感心してしまった。
「温かいな」
「俺はお前を探し回っていたから暑いくらいだぞ、
そのドレス、胸元空きすぎで肩冷えるだろ」
「どこ見てるのだ」
「い、いや…そうだ。」
視線を泳がせながら頭をポリポリと掻いている。
それからにっと笑って見せる。
「温かくなる魔法って知ってるか?」
「妾が今考えておったのだ」
「何かあったか?」
「むぅ…浮かばぬ。」
拗ねたように口を尖らせ、戦人を見上げてみる。
「そなたには何か浮かんだのか?」
「ん?こうすると…―――」
(ぎゅ………っ)
「!?」
戦人がベアトリーチェを大きなマントごと、包み込むように抱き締めた。
ふわりと魔女の甘い香りが戦人の鼻腔を擽った。
「…温かいだろ?」
「………戦人の魔法か?」
「まぁ、そうかもな」
「狡いやつだなァ、温かいに決まっておるわ」
冷たくなっていた肩が人の温かさを伝えてくる。
マント越しに戦人の抱き締める力を感じる。
「…温かいな」
背中を戦人に預けながら、ベアトリーチェは彼に見えないように微笑んだ。
小さな魔法
(それは簡単で、大きくて、)
end
*あとがき
お久し振りです、月華です。
本当にお久し振りですね(笑)
忘れられていたんじゃないでしょうか
漸く復活しました。ただいま
これからもまたゆっくり更新していきます。
相変わらずの出来ですが精進します
それでは
2月5日