knight | ナノ


























はて、自分はこんなに息を切らして何をしようとしていたのだろうか。
こういう切羽詰まったような状況だと自分が何をしていたかすっぽりと頭から抜けてしまうこともよくある。
あるいは、嫌なことは忘れてしまうという生き物の心理なのだろうか。



「またそなたか」



背にしたドアが勢いよく開かれる音を聞いて、ようやく自分の立場を思い出した。
狩られるウサギ、と言ったところか。
では今入ってきた人物はウサギを狩るオオカミだろう。
ため息混じりに視線だけを入ってきたオオカミに寄越した。



「そう言うな、ベアトリーチェ。
これほどにもお前を愛しているというのに!」



「しつこい男は嫌われるぞ、金蔵。」



コツ、コツ、と靴を鳴らしながら金蔵と呼ばれた歳の老いた男がベアトリーチェの側に寄る。
手の届く距離までくるとピタリと静止し、皺の深い顔にどこか気味の悪い微笑を浮かべた。



「な、なんだ。」



急に肩をつかまれ、身動きがとれなくなる。
離せと身をよじっても、肩をつかむ両の手に余計に力がこもるだけだった。



「ベアトリーチェ!何故いつもいつもそうやって私を拒むのだ!!」



「うるさいっ離せ!わ、妾はッ!」



ベアトリーチェも細い両腕に力を込めるが、目の前の大きな体はびくともしない。
ああもう、なんでこうなるんだ。
完全に、逃げられない―――





「茶番はそれくらいにしてくれよ、爺様。」





「な………!?」



金蔵が振り返ると、扉にもたれながら此方を軽く睨みつける青年がいた。



「ばっ、戦人!?何故ここに…っ」



「お前を捜してたんだが、爺様も見当たらないんでな。
一緒にいるんじゃねぇかと思ってよ。そしたら案の定ってワケだ。」



少し不機嫌そうな声色で吐き捨てると、唖然としていた金蔵の腕の中からするり、とベアトリーチェを引っ張り出す。
強く腕を引かれたため、よろけたが戦人は気にせずこの部屋の出口を目指した。



「おい、ベアトリーチェを私から奪っていくなど………」



「悪ぃな、先約入ってっから。」



そう言うと、おろおろとしているベアトリーチェ引っ張りながら金蔵には目もくれず、出て行った。



















***



















「むぅ、戦人、怒っておるのか?」



「別に。」



「なっ、明らかに怒っているではないか!
妾が何かしたか!」



ベアトリーチェの問いに言葉少なになりながら、戦人は掴んだ腕を放さずに歩き続けた。



「戦人っ!!」



しびれを切らしたベアトリーチェがぐっと立ち止まった。
気が付けば、薔薇庭園まで出ていたようだ。
これが普通の民家なら、素足で外を歩いていたところだろう。



「なんでだ」



「は?」



「なんで俺の名前を呼ばなかったんだよ」



「い、いや………」



恐ろしくて声がでなかったというか、呼んでも来てくれるかも分からなかったし…



「お前が呼べばいつでも来るから」



「戦人?」



なかなか此方に視線をよこしてくれない。



「ちゃんとお前の声、聞こえるから。」



「あ………」



少し顔を赤らめながら膨れた顔で戦人が言った。
それはどこか、子供が拗ねるような表情に似ていて。
少しだけ可笑しくて、ベアトリーチェは笑う。



「承知したぞ、」





私のナイト―――――






















knight
(白馬に乗って、ね?)
















end




*あとがき

キリ番4900をお踏みいただいた伽月様から「ベアトにしつこい金蔵を戦人が追い払う感じ」というリクエストをいただき、書かせていただいたものです。

ごめんなさいッッ!!
本当にたくさんのお時間待たせてしまいましたorz
6月にリクエスト頂いたのに返すことができたのが8月とか(T-T)
ほんっとうにすいません!


え、なにこの昼ドラ←
戦人の登場セリフ我ながら恥ずかしいwww
しかも待ておいわたしっ!
ひさびさだからなんか展開がおかしいよ!
序盤とか話かっ飛びすぎて謎ですね、分かります
こんなのでよろしいでしょうか?
よろしくないです。ごめんなさい。


リクエストはいただいた順に必ず答えさせていただくので、
待っていただけると嬉しいです(>_<)

伽月様のみお持ち帰り可でございますー





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