暑い。
ジトリと張り付いた髪や服を思うと幾分かげんなりした。しかし同じ状況にも関わらず、顔色一つ変えずにこの男は日の光を浴びている。少しだけ苛ついた。
早く、夜よ来い。
そんなことを思っていれば、彼の男と目があった。少しばかり微笑んでいるように見えなくもないが、見間違いであろう。

「何がおかしい。」

聞いては見るものの、答える様子はない。
そんな男に私は再び苛立って、徐に窓辺へ近付いた。
やはり暑い。不快だ。

「もう夏も終わりよ。」

先日よりも心なしか澄んで見える青空を眺めるその目は、普段とは比べものにならない程の暖かさを孕んでいた。しかしそれと同時に、何か別のものを纏っているようにも見える。
男が私の名前を呼んだ。だがそれを無視して目線を空に移す。
窓枠に切り取られ、そこだけ輝いているのは、少しばかり異質で滑稽だ。

「ほう、貴様の凡庸な頭もとうとう日輪の有り難さを理解したか。」

今日は本当に珍しい光景にばかり出会う。嬉々とした表情でこちらを見た男は私の隣へ移動し、今は再び空に目を移している。しかし先程の何かは見当たらなく、私の中には少しばかり安堵感が広がった。

「離れろ。」
「我を拒めるのか。」

最後の問いには答えない。

「ふん、やはりな…、貴様はそれでよい。」
「膝を貸せ。」

ひっついてきた男を引きはがし、その膝に頭を載せた。

「睡眠は必要無いのでは無かったか。」
「黙れ。私を拒むことは許さない。」

男はしばらく皮肉ばかり吐いていたが、私はそれを無視して目を閉じた。こんなものただの気まぐれでしかない。我が親友やこの男が睡眠を取れとかなんとか煩いからであって、この男が消えそうに見えたからなどということは断じてない。

「では我を拒むことも許さぬぞ。」

男の手が、頭をするりと撫でた。少しくすぐったい。心なしかふわりとしたこの気分に任せ、私は意識を手放した。



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