「ポケモンとの付き合い方は人それぞれだが、これからは新しい何かが必要となってくるかもしれん」
「…なるほど。だからアデクさんはチャンピオンをお辞めになったのですね」
「…おぬしはポケモンをどう考える?」
「以前にも似たような事をきいてきた人がいましたが、私はポケモンなんて商売道具にしか思ってませんよ」
「…そうか」
第五話
力あるもの
アデクさんの作る料理、意外と本格的で美味しかったわぁ。
また作って欲しいな。
「今日はどうするのだ?」
「さぁて…どうせ仕事は何も入ってませんから、少しゆっくりするつもりです」
「ほぉ…ならばわしとバトルをしようじゃないか!」
「…いや、嫌ですよ。アデクさんと戦ったって勝負になるわけないじゃないですか」
「負ける事も勉強!それに…」
なにその意味深な目つき。
やめてください、こっち見んな。
「おぬしならアイリスやジムリーダーくらい何ともないと思えるのだがなぁ…?」
「あっはっは。アデクさん、笑わせないでくださいよ。私を評価しすぎです。私はただの配達員ですからね」
「今は、の」
「………」
おいこの老いぼれ。不必要な事べらべら喋らないで欲しいわ。
「…まぁいい。ならば外へ出ようじゃないか。部屋の中にいても暇だろう」
「そうですね。日の光くらい浴びないと」
…食えない人ね。これだからこの人は…。
「苦手なんだよねぇ…」
「?何がだ?」
「いいえ、何でもありません」
「ツタージャ!ヒロリさんのスワンナに今度こそ勝つぞ!」
「おぉ、元気な声だな」
「そうですね、元気すぎるくらいに」
あの声はヒュウ君ね。方向からして牧場へ向かったみたい。
あの子、どこにいても騒がしいのね。
「ヒオウギやここ、サンギでは駆け出しトレーナーが多いからな。毎日毎日、あのような元気な声が聞こえてくる」
「それじゃおちおち休んでいられませんね。その声に感化されるのでは?」
「うむ。わしもまだまだ若いのには負けてられんよ」
かっかっか、と豪快に笑うアデクさんは隠居したおじいちゃんそのもの。
この人がイッシュ最強だった元チャンピオンとは…想像が出来ない。
Nとあの双子達に負けて以来あまり話題には上がらなかったものの、まだまだ現役って感じ。
「…あの」
なんてアデクさんについて考察していたら、後ろから話し掛けられた。
「…あら、可愛いトレーナーさんね。何か用?」
後ろを向けば、サンバイザーをした男の子が。
年はおそらく十歳前後。腰には一つのモンスターボール。
服も新しいようすを見ると、この子も駆け出しトレーナーなのだろう。
「えっと、ここらにハリーセンみたいな男の子来ませんでしたか?」
「ん?それはツタージャを連れたトレーナーか?」
「!そうです!」
「その子なら見掛けたわよ。私が案内しようか?」
「え?でも…」
戸惑った様子はさらに可愛い。この子中性的な顔付きだから女装させたいなぁ。
「遠慮しなくてもいいのよ」
「え、じゃあ…お願いします」
そんな光景を見ていたアデクさんが私に呟く。
「…珍しいの。無償で動くなんて」
「気分です」
「…そうか」
わしの頼みも無償できいてくれれば…と呟くアデクさんを無視して、男の子に向き直る。
「それじゃ行きましょうか」
「あ、はい。お願いします」
いざ、サンギ牧場へ
(ほらほら、早くしないと置いていくわよ)
(ちょっ、待ってください!)
((…ふむ、そろそろ子供達が来る時間か))
戻る